2024/10/29 11:18
今回のありがたい試みとしては、製作家本人のみ係員の許可を得て楽器を展示台から取ることができ、その立ち合いがあれば私たちも手に取って見ることができるというものでした。幸い、会場で製作家さんとお会いでき、彼の受賞作品を実際に手に取って堪能させていただくことができました。
さて、受賞作品はもちろん素晴らしいのですが、それらのみが優れているわけではありません。製作家が高みを目指して丹精に製作した楽器なのですから、そこにこそ価値もあるといえます。会場で一つ一つ見ていくと、惹きつけられてつい立ち止まって見る作品というものがいくつもあります。その作者の名前を確認すると、「あ、〇〇か、やはりいいなあ」と再認識したり、「お、知らない作家だけれどいいなあ。覚えておこう」と思ったりとさまざまです。今回コンクール出品作品で私どもに入荷したものもあり、私どもにとっては自信を持ってお客様にご紹介していける最高の作品であると認識しています。
最後にトリエンナーレ国際製作コンクールとはどんなものですか?という質問に答えてくれた製作家のお話です。
・他のコンクール以上に出品期限が近づくにつれピリピリ感が増す
・出品期限が近づくと製作者同士で口数が少なくなる
・精神的にも疲労困憊になるが無事提出するとなんとも晴れやかな気分になる
・良い楽器を作れるようになるため毎回挑戦していきたいものである
・他の作家の作品を学んで常に技術の向上、スタイルを進化していくことができる
・製作家としてのモチベーションになる
・自己のスタイルを確立していくために不可欠なもの など
一人一人がさまざまなことを目標に自身のスタンスで臨んでいるのだと感じます。そして私のようなプロのディーラーにとっては、その楽器からどんなインスピレーションを感じるか、どういうパーソナリティーを感じられるかということを見ていくに尽きます。パーソナリティーを感じられないものは、まだ、真似事の域から抜け出られていないものですが、先人のスタイル(基本)(お手本)に忠実であろうとすることは重要であり、その中に将来の可能性を見極めていくことが私たちの仕事なのかもしれません。まだ発展途上のものの中に原石はあるもの。こういう機会が製作技術や文化の向上につながっていることは間違いがなく、終了と同時にまた3年後が楽しみになるというものです。