特集
2021/07/28
いよいよ7月も後半に突入し、本格的な夏の時期がやってきました。連日のように30℃を超える暑さが続き、身体の不調を感じている方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、日々の体調管理について様々な助言を行っている漢方薬の専門家、皇漢堂林薬局の林誠一先生に、夏の暑さをうまく乗り切るための対処法について詳しくお聞きしました。
中日教えてナビ
編集部
「夏の暑さを感じやすい人」は、「暑がりの人」ということが言えると思います。「暑がり」とは、身体の中で熱を発生させやすい人のことを指し、大きく3つのタイプに分かれます。
1つ目のタイプは、漢方の「五感」でいう「肝熱タイプ」の方です。興奮しやすい性格の持ち主、少しのことでもすぐにイライラする人が、このタイプに当てはまります。神経的に熱を発生しやすく、すぐに頭に血が上ってしまうような人です。
2つ目は、「胃熱」と呼ばれるタイプです。消化が活発で、エネルギー源を製造する力が強い人のことを指します。固太りで、体格が良く、体毛が濃い方や、食欲旺盛な方などが当てはまります。見た目は痩せているにも関わらず、とても胃腸が丈夫で、「痩せの大食い」と呼ばれるような人にもこのタイプが多いです。
3つ目は、身体の引き締める力が弱いタイプです。少しの暑さで引き締める力が弱くなり、汗が吹き出すように出てくるのが特徴です。水太りタイプの人に多く、汗が漏れてしまうわけです。こうした状況は、水太りだけでなく、老化現象でも起こります。漢方では「腎虚」タイプと呼んでおり、老化によって体の締まりが弱くなり、少しの暑さで上半身から汗が出やすくなります。熱いものを食べると、汗がたくさん出て、鼻水も一緒に出てしまうようなご老人は、このタイプだと言えるでしょう。
ここまで「暑さを感じやすい人」「暑がりの人」の3つのタイプについて解説してきましたが、逆に「暑さを感じにくい人」には、どういったタイプがあるのでしょうか?
暑さを感じにくい身体にもいくつかタイプがありますが、その一つが、暑がりの逆で、寒がりタイプです。身体のなかで熱を発生させる力が弱く、冷えやすい人が当てはまります。
そのほかには、胃の働きが弱く、活動力が弱いタイプがあります。食が細くて疲れやすい人が当てはまります。また、血流が悪くなっている人、老化が原因で温度変化に鈍感になっている人なども、暑さを感じにくい身体になっていると言えるでしょう。
「暑がり」というと、「暑さに弱い人」という風に捉えられがちですが、暑さにも強いと言えます。また、「寒がり」であれば「暑さに強い」と思う人もいるかもしれませんが、そうではありません。寒がりの人は、新陳代謝が弱いことが多いため、寒さだけでなく暑さにも弱い傾向にあります。どちらにも気を配ることが大切です。
冷たいものが体にいいかどうかを判断するうえで大切なのが、「夏と冬の身体の生理現象」を考えることです。
春から夏は、自然界では温かさが増し、徐々に暑くなり、陽気が盛んな時期だと言えます。そして、人間の身体もこうした変化に対応し、どんどんと活発に発散を行う時期にあたります。身体の内側から外側へと熱が発散され、身体の外側にエネルギーが向かいやすいため、薄着でいられるというわけです。逆に、秋から冬は、エネルギーを蓄える時期です。できるだけ熱を発散しないようにするため、エネルギーは外側ではなく内側へ向かいやすくなります。
こうした生理現象から考えると、夏場はエネルギーが外側に向かっていくため、どうしても内側がお留守になりがち。防御が手薄になっているというわけです。それにも関わらず、暑いからといって冷たいものを摂りすぎると、胃腸の働きが弱まりやすい。そのため、胃腸を壊すことが多くなりがちで、夏場に胃腸風邪になりやすいのはこのためです。
その一方で、冬場は、エネルギーが内側に向かい、身体の表面の防御が手薄になりがちだと言えます。そのため、きちんと厚着をして寒さから身を守らないと、すぐに風邪を引いてしまうわけです。
では、夏の暑さをうまく付き合うためには、どのような生活を心掛ければいいのでしょうか。
これまで解説してきた通り、本来、夏場はエネルギーを発散しないといけない時期です。それにも関わらず、エネルギーを発散しないでいると、身体の中に不活性化したエネルギーが溜まり、秋を迎える頃にさまざまな弊害を引き起こしてしまう可能性があります。
そこで、暑い時期に気を付けておきたいのは、まず「身体を冷やしすぎないこと」。そして「適度な運動をして汗をかくこと」です。特に、クーラーの効いた部屋で過ごす時間が長い方は、意識的に運動を取り入れてエネルギーを発散するように心掛けてください。
ただし、運動をする時は、くれぐれも体調管理に気を付けてください。最近では、40℃を超えるような猛烈な暑さが襲うこともあります。無理に運動をすると、熱中症や脱水症状になる危険もありますので、運動をする際は、適度な水分補給を忘れないようにしてください。