特集
2022/03/31
「どんなケースだと、保険に加入したほうがいい?」「保険って、どんなタイミングで始めるべき?」。子どもの出産を控えたタイミングで、このような疑問を抱く妊婦さんは少なくありません。待望の赤ちゃんを迎えた後も、医療費や子育て費用に不安を抱く人は多いでしょう。そこで今回は、赤ちゃんが加入できる保険について、ファイナンシャルプランナーの大森英則さんに詳しくお聞きしました。
保険・資産運用のスペシャリスト
大森 英則
赤ちゃんが加入できる保険は、「医療保険」「生命保険」「学資保険」の3種類です。保険の加入が必要かどうかは、将来の資金計画や、保障を期待したい内容によって大きく異なります。
まず「医療保険」についてですが、そもそも子どもの医療費は「乳幼児医療費助成」という社会保障でカバーされています。平成30年の厚生労働省の調査によれば、全国の都道府県及び自治体すべてで、乳幼児への医療費援助が行われているため、日本国内で育児をするのであれば、助成が有効な年齢の間(自治体により異なる)は、民間の医療保険に加入する必要ありません。
ただ、各自治体によって、子どもの医療費助成に関する条件は異なります。対象年齢を就学以前としている自治体もあれば、最長で22歳の年度末までとする自治体もあります。さらに、所得制限や自己負担の有無などの条件も違います。助成が早い段階で終了したり、受給条件が厳しく対象から外れる可能性があるのなら、医療保険の加入を検討してみるのがよさそうです。
また、お子さんに先天的な病気がある場合も、加入を検討してみるのがおすすめです。医療費は保障されたとしても、入院中の差額ベッド代や、看病する保護者の付き添いベッド代、食費や交通費などは、公的な保障を受けることができないからです。こういった場合には、入院や通院の回数に応じて給付金を受け取ることができる医療保険が有効です。
一般的に「生命保険」は「死亡保険」であり、遺族に資金を残したい大人が加入するのが基本です。そのため、赤ちゃんが加入する必要性はほとんどないと言えます。
それでも赤ちゃんが終身保険に加入するメリットがあるとすれば、「解約返戻金を受け取れる点」が挙げられます。加入から一定期間を経過すると、解約の際にまとまった額の解約返戻金を受け取ることができ、保険のプランや払い込み期間によっては、学資保険や養老保険より高い利回りを実現することも可能だからです。
また、学資保険には満期があるのに対し、生命保険は払い込みが終了すれば自由なタイミングで解約できるのも利点の1つでしょう。この特徴をうまく利用し、「保険で手堅く貯蓄したい」「大きくなったらプレゼントしたい」という理由で、あえて生命保険に加入するという人もいます。
生命保険は、健康だからこそ加入できる保険です。そのため、保険料が安い間に加入するというのも一つの手段です。ただ、終身保険は保険料が高額になりやすく、早期解約をすると損をしやすい保険です。加入を決めたら不要な保障やオプションをつけず、早期解約をする可能性がない額でスタートするようにしてください。
「学資保険」は、子どもの将来を考え、多くの妊婦さんやパパママが検討する保険だと思います。学資保険は、万が一の事態に備えながら、将来に向けて子どもの教育資金を準備するための保険であり、「貯蓄」と「保障」の両面からメリットがあります。
子どもの進路によっては、高校や大学の受験や入学の際に、予想を超える出費となることも考えられます。また、学費だけでなく、子どもの生活にかかる費用も徐々に大きくなっていきます。学資保険は、まとまった資金が必要なタイミングに満期を設定し、保険金を受け取れるのが特徴です。
小さい頃から少額を積み立てていくことで、まとまった教育資金が必要になった時にも慌てずに済みます。銀行預金より高い利回りを期待でき、より効率のいい方法で運用できる点にも魅力があります。
また、「親の万が一に備える」という点でもメリットがあります。契約者となる親が死亡や高度障害、身体障害状態となった場合には、保障を継続しつつ、以後の保険料の払い込みが免除されるからです。病気の発症や不慮の事故などで、突然収入がなくなってしまうリスクは、誰にでもあります。親に万が一のことがあったとしても、子どもの教育資金を確保できる点はとても心強いでしょう。
特に学資保険については、子育て世帯に特化した保険であるため、商品によっては加入年齢が限られているものもあるので注意が必要です。加入者の半数近くが、子どもが0歳のうちにスタートしており、一般的に早い段階で加入した方がいいと考えられています。ただ、学資保険は、保険会社によってさまざまな特色があります。なかには元本割れする商品もあるため、内容をよく確認することがとても重要です。
母子がともに健康で、妊娠の経過にも問題がなければ、“出生前加入”が可能な学資保険もあります。多くの場合、出産予定日の140日前から加入できるため、保険会社に条件を確認してみてください。赤ちゃんが産まれた後は、寝不足や疲れで、保険の検討が難しくなることも考えられます。その点、出産前であれば、夫婦でゆっくり相談する時間も確保でき、将来に向けたマネープランを立てやすいと思います。
保険選びは「いくらもらえるか?」に注目しがちですが、「受け取りのタイミングが希望に合っているか?」という視点も大切にしてください。返戻金を重視するあまり、資金が必要なタイミングで満期を迎えられないのであれば、本末転倒です。ママパパどちらの名義で加入するか、いつ・いくら受け取りたいかについて、あらかじめ考えた上で保険会社に相談しましょう。