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老舗茶舗の主人が教える「お茶の美味しい淹れ方」とは?

2022/09/02

奈良時代に中国から渡来したお茶の文化は、脈々と現代に引き継がれ、今なお愛され続けています。まさに日本人の心の文化と言っても過言ではありません。そこで今回は、名古屋・尾頭橋を中心に80年近くお茶文化を支えてきた株式会社尾頭園の鈴木茂博さんに、日本茶の美味しい淹れ方を伺ってみました。

中日教えてナビ編集部

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美味しいお茶を淹れる準備

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美味しいお茶を淹れるためには、まず必ずお湯を沸騰させることが大切です。できたら数分間沸騰させるのがよいでしょう。なぜなら、水に含まれるカルキや塩素を飛ばし、硬水から軟水にする必要があるからです。こうすることで、お茶の味が格段に良くなります。

また、当たり前ですが、お客様の数に合わせて、急須と湯飲みも準備してください。急須は、昔のアルミのやかんみたいなものではなく、愛知県であれば常滑焼、三重県であれば万古焼など、陶器のものを用意してもらうのがよいでしょう。急須の大きさは小ぶりのものがよく、湯飲みは香りが飛びやすい口が開いたタイプがおすすめです。色は白いものがよいでしょう。

なお、昔からお湯を沸かす時に南部鉄がよく使われてきましたが、今では一般のご家庭で使っている人はほとんどいないと思います。美味しいお茶を淹れるために、南部鉄にこだわる必要はありません。もっと手軽に扱えるポットやケトル等の道具で十分だと思います。

美味しいお茶の淹れ方

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お茶は、最初に蒸し器で蒸します。50~60年ほど前のお茶は、蒸す時間が短いため、どうしても針のようにピンとしたものが多くありました。こういうお茶の場合、湯冷ましをしなければなりません。沸騰したお湯でお茶を淹れると、お茶の香りが飛んでしまうからです。また、同時に旨味も飛び、苦みが出てきます。なおかつ色もきれいではありませんでした。

ところが最近のお茶は、どの産地のお茶でも、蒸す時間がどんどん長くなってきました。こうしたお茶の淹れ方は、蒸す時間が短かった以前のお茶に比べて、それほど難しくはありません。昔ほどお茶を淹れるのが難しくなくなり、気を使う場面もなくなってきたため、以前よりも手軽に楽しんでもらえるようになりました。

押さえておきたいポイントは、お茶の色を見ながら淹れていくことです。急須を回しながら注いでいけば、お茶の味が片寄ることはありません。湯飲みに注ぐ時は、お茶の色を見ながら、順番に均等な色で出すようにしてください。

お茶は、産地ごとに蒸す時間が違います。静岡産のようにじっくり蒸した深蒸し茶の場合、すぐにお茶が出ますので手際よく入れてください。その時は「お茶がおいしく出ますように」と念じながら淹れるようにしましょう。見栄えよく美味しそうに料理を盛り付けるのと同様に、お茶を淹れる時にも色や湯飲みにこだわりたいものです。

産地別のお茶の特徴(味・香り)は?

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静岡茶の特徴は、とてもバランスが取れていることです。昔ながらのお茶の香りと本来持つさっぱりした渋みに秀でています。三重県のかぶせ茶は、文字通り茶園をワラなどで覆い、直射日光を避けて育てたものです。苦み・渋みのない、甘みの多いお茶になります。

九州のお茶は、福岡県の八女茶、佐賀県の嬉野茶、鹿児島の知覧茶などがありますが、全く特徴が異なり、それぞれの土地の味が出ています。福岡の八女茶は、ほかの地域に比べてそこまで深蒸しではありません。深蒸しの一歩手前のところまで蒸しており、香りも高く、味も美味しいです。静岡に比べるとそれほど色は濃くありませんが、味はしっかり出て京都宇治茶と並ぶ玉露の代表的な生産地です。佐賀県の嬉野茶は「蒸ぐり茶」といい、丸みのある葉と新鮮な味、甘さに特徴があります。鹿児島の知覧茶は、静岡とよく似た深蒸し茶ですが、こちらも甘みが強いのが特徴です。

ご家庭で簡単にできるお茶の楽しみ方のポイント

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一時期ブームになりました、お茶を粉末に加工すれば、色々な食べ物と混ぜて楽しむことができます。ヨーグルトに混ぜたり、牛乳で割ったり、アイスクリームと一緒に食べたりと、より手軽にお茶を楽しめます。また、香りを楽しみたい方には、茶香炉もおすすめです。

抹茶であれば、塩と混ぜて抹茶塩を作り、色々なお料理の調味料として幅広く使えます。最近では、カフェなどで嗜好を凝らした抹茶スイーツがたくさん作られており、若い人たちを中心に流行っています。ご家庭でも真似して楽しんでみてはいかがでしょうか。私のお店で商品化したものの中では、牛乳と抹茶を混ぜ、それを凍らせた冷たいスイーツがとても人気です。

最後に、たくさんのご家庭で愛用されている「水出し茶」についてですが、私はこれに替えて「ロック茶」を飲まれることをお勧めします。文字通り、ウイスキーのロックから来ている呼び名ですが、従来通りの方法で淹れた熱いお茶を、氷に注いで溶かしながら作ったものです。瞬間的に熱いお茶を氷に溶かして淹れるため、お茶本来の香りが逃げず、色も変わらず楽しむことができます。最近ではティーパックなどの製造技術も向上し、水出し茶でもかなりおいしく頂けるようになりましたが、一度このロック茶をお試しになってはいかがでしょうか。おすすめですよ。

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