特集
2017/10/30
11月8日は、「いい歯の日」です。この記念日を認定した日本歯科医師会では、「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という「8020運動」を推進しています。自分の歯を保つための身近な方法のひとつが「歯磨き」。ただ、あなたは正しい方法で磨けていると自信を持っていえるでしょうか? 実は、一生懸命磨いていても効果がなかったり、悪影響を与えていることさえあるのです。そこで今回は、大山矯正歯科の大山照彦先生に「正しい歯磨き」について詳しく教えていただきました。
痛くない 早い 見えない 矯正治療を
大山 照彦
実は、歯磨きを一生懸命やっているにも関わらず、虫歯や歯周病になる方は結構います。その原因は、口の中の状態を知らずに自己流のセルフケアをしてしまっているから。まずは自分に合った正しい歯磨きを実践することが大事です。
そもそも歯ブラシは、どんなものを選べばいいかご存知でしょうか。自分に合った適性サイズを選ぶのは難しいもの。最初は歯科医院で選んでもらうのがベストです。そして1カ月に1度は交換するようにしましょう。
今、一番良いと言われているのが「スウェーデン式歯磨き法」です。「ワンタフトブラシ」という、毛束が小さく1つにまとまった歯ブラシを使う方法で、ペンを持つようにグリップを握り、やさしい力でプラーク(歯垢)がたまりやすいリスク部位を清掃してきます。
リスク部位には、歯の表面に細菌が層をなして堆積したバイオフィルムができやすいです。排水溝のぬめりのようなもので、通常の歯磨きではプラーク以上に取りにくく、歯科医院で機械的に取り除かないといけません。このバイオフィルムの発生を予防するためにも、この歯磨き方法が効果的なのです。
歯が重なりデコボコがある部位、歯と歯茎のきわ、歯ブラシが届きにくい奥歯、歯と歯の間などを重点的に磨きます。このワンタフトブラシをメインに歯磨きをした場合、通常の歯ブラシに比べて、大幅に磨き残しを減らすことができたという調査結果もあります。
歯磨きをするとき、たっぷり歯磨き粉をつける人は、注意が必要です。歯磨き粉が多いと泡立ちがよくなり、磨いた気になってしまいがち。十分に磨けていないということも考えられます。特に発泡剤が多すぎるものや、ミントが強いものなどは、磨いた気になりやすいので注意しましょう。
ただ、水だけの歯磨きでは、歯の着色を落とすのが難しいのも事実。歯磨き粉には研磨剤が入っているから、着色を落とすには効果的です。そこで、普段、水で歯磨きを行っている人は、週に何回か歯磨き粉を使うようにすると見た目もきれいになります。
歯磨き粉の分量は、ブラシの3分の1程度が目安です。フッ素入りの歯磨き粉は、歯の表面を強くするためには良いですが、ゆすぎすぎると流れ落ちてしまうのが難点です。そのため、歯磨きをした後、フッ素剤を別で歯につけるのがベターです。
歯磨きは長くした方がいいとお考えの方もいると思いますが、大切なのは、時間の長さではありません。正しい磨き方をしているかどうかです。3分でも正しければOK。正しい磨き方を習慣化するためにも、子どものときから歯科医院で正しい方法を教わっておくといいでしょう。
これは意外に思われるかもしれませんが、食後すぐの歯磨きは、歯にとって決して良いことではありません。食後すぐは口の中が酸性の状態になっているため、磨くと歯が傷つきやすくなってしまうのです。唾液で中和される30分後くらいに行うのがおすすめです。
また、できれば寝る前に歯磨きをするようにしてください。寝ている間は、唾液の分泌が少ないので菌が増えやすいからです。大きな口を開けて寝ているような人は、さらに細菌が増殖しやすいので要注意です。
最後に、歯周病や虫歯を予防する上で注意する点についてお伝えしたいと思います。
歯周病や虫歯を特に注意したいのは、「タバコを吸う人」や「甘い飲み物を頻繁に飲む人」です。タバコを吸う人は、歯が着色してきますが、これは歯磨きだけでは落とせません。さらに、歯茎を痛めますから、歯槽膿漏になるやすくなることも分かっています。
コーラなどの炭酸飲料やスポーツドリンクなどの酸性飲料を飲み過ぎるのは、歯にとって良くありません。特にペットボトルなどで吸うように飲むと、さらに歯が溶けやすくなります。健康に良さそうなイメージがある乳酸菌飲料も、歯の健康に関していえば炭酸飲料と同じ。飲んだ後は、できるだけすぐに歯磨きをするように心掛けましょう。
また、歯周病や虫歯を予防する上で、意外と知られていないのが歯を矯正することのメリットです。歯科矯正は、単に見栄えが良くなるだけではありません。歯並びが改善されることで歯を磨きやすくなり、結果的に歯周病や虫歯の予防にもつながるのです。
矯正のタイミングは、乳歯の時期ではなく、ある程度大人の歯が生えてきた小学生くらいから始めるのが良いと思います。ただ、これはあくまで目安であり、たとえ高齢者であっても、歯茎が健康であれば、いつくになっても歯の矯正をすることは可能です。