特集
2024/10/25
現代の私たちが逃れられないストレス。このストレスと上手に向き合うためのひとつの方法として鍼灸が注目されています。はり師・きゅう師(鍼灸師)で津中日文化センターの講師も務めるひよこ鍼灸サロンの倉田あかねさんに、鍼灸を用いたストレス解消法をお聞きしました。
はりときゅうの伝道師
倉田 あかね
施術については、施術者(施術所)によってさまざまで、これといった決まった方法はありません。
鍼(はり)施術については、鍼を管の中に入れてトントンと叩くようにして体に入れていく方法が最もポピュラーだと思います。使用する鍼は髪の毛くらいの細い鍼もあれば、韓国ドラマなどでみるような太い鍼を用いる場合もあります。刺さない鍼を用いる施術所もあります。また、鍼は使い捨ての鍼を使っている鍼灸院がほとんどだと思います。
灸(きゅう)施術もさまざまなものがあります。台座の付いたお灸(直接ヒフに接触しないためやけどの心配が少ないもの)を用いることもあれば、もぐさを米粒大に手でひねって直接ヒフの上に置いてすえる場合もあります。
施術する場所、アプローチの方法もいろいろあります。ツボが持つ効能を用いるために、ストレスに効くツボを狙う方法もあれば、硬くなった筋肉を狙っていくような方法もあります。
鍼灸施術による効能として、血流改善やそれに伴う筋緊張の緩和が挙げられます。とくにストレスを抱えている方は、首から肩甲骨周りの筋肉が固くなっている場合が多いので、そのあたりに鍼やお灸をすることでスッキリされる方は多いです。
また鍼灸の施術を受けると、副交感神経の働きがよくなるといわれています。副交感神経というのは自律神経のひとつで、安静時に働く神経です。ひとのからだは、この副交感神経と活動時に働く交感神経とがバランスをとることで正常に働いています。長くストレスにさらされると、それに対抗するために、活動の神経である交感神経が働きっぱなしになり、自律神経のバランスが崩れます。鍼灸によって弱っている副交感神経の働きをよくすることは、自律神経のバランスをとるのに効果的です。
読書が好きなら読書、運動が好きなら運動、お風呂が好きならお風呂など、基本的には自分の好きなことをするというのがいいと思います。深呼吸も効果的です。ただ、読書が好きだからといって一日中動かずに読書していたら、からだも固まってしまいますし、運動が好きだからといってハードな運動をし続けていたら、かえってからだには負担になってしまいます。お風呂も長風呂が過ぎるとのぼせてしまったりします。動いたり休んだり、バランスよく行うことが望ましいです。
ツボを使ったストレスへの対処法としては、手首にある『内関』(ないかん:手首の掌側の中央で、手首のシワから指3本分上)や、足の甲にある『太衝』(たいしょう:足の第1趾と第2趾の付け根の骨の間)などがよく使われています。指で気持ちがいいほどに押すのがお勧めです。
鍼灸は、現代医学のようにレントゲンなどの検査機器を使って患者さんの状態を診ることができません。そのため患者さんからの訴えをよく聞いて状態を把握していく必要があります。日常生活の何気ないことが症状のきっかけになっていることもよくありますので、一見すると症状とは無関係に思えるようなお話もしっかり聴かせていただきたいです。
この「話す」という行為が、心のリフレッシュに効果的です。普段ため込んだ不安や不満などを第三者に吐き出すことで精神的な解放を得られることは、「カタルシス効果」と呼ばれます。たくさん話をして、心も体もリラックスできるのが鍼灸の強みです。
鍼灸施術を受けたあとの感想で多いのが、「すっきりしました」や、「からだが軽くなりました」の声です。
ストレスなしでは通れない現代社会、鍼灸を上手に活用してほしいです。