特集
2017/11/13
一生に一度の大きな買い物だと言われる住宅ですが、日本における住宅の平均寿命は30年前後。その一方で、他の先進諸国を見てみると100年を超える国などもあり、日本の住宅は飛び抜けて短命であることが分かります。では、日本と海外の住宅の違いはどこにあるのでしょうか。そして、住宅を長持ちさせるにはどうすればいいのか。そんな新築住宅にまつわる気になる疑問を、株式会社新和建設の後田文子さんにお聞きしました。
暮らしを創造
後田 文子
日本の住宅の平均寿命が短いのは、戦後の復興期から高度経済成長期にかけて、とにかく雨露がしのげる住宅がたくさん必要だという考えから、耐久性などを気にせず、「質より量」の発想で多くの住宅が建てられたからと言われています。
また、日本の住宅の平均寿命が短い背景にはもう一つ、中古住宅の資産価値が低いという点も挙げられます。リフォームによる資産価値向上も期待できない風潮にあるため、古くなった家は取り壊し、新築に建て替えるという考え方が浸透しているのでしょう。
一方、住宅の寿命が長いアメリカでは、リフォームを重ねた家の方が、資産価値が高いとも言われています。中古住宅を購入する人は多く、中古に対する懸念も日本ほどないことから、家は取り壊されることなく使われ続け、寿命は長くなるわけです。また、日本は家を建てればずっとそこに住むことが多いですが、海外では、住み替えをする傾向が強いとされ、中古住宅が活発に売買されることも要因の一つです。
ただ、住宅の平均寿命が短いとされる日本であっても、耐久性の高い住宅であれば十分長持ちします。近年は、住宅業界を挙げて長持ちする家に意識を向けており、後述する長期優良住宅を建てる住宅会社も増えてきています。日本の住宅が性能面で海外に劣るようなことはないと思っています。
家を建てるうえでよく比較されるのが「鉄骨」と「木造」です。それぞれメリット・デメリットがあるわけですが、鉄骨住宅の特長の一つが、スパンと呼ばれる柱と柱の距離が取れることです。これにより、木造家屋では構造上難しい大空間を作ることができます。壁を自由に変えることで、ライフスタイルに合わせて柔軟にリフォームを行えるのが魅力です。
一方の木造ですが、「鉄骨よりも弱いのでは?」と考える人もいるかもしれませんが、築1400年を経過した奈良の法隆寺などが例に挙げられるように、木が弱いということはありません。
木造住宅の魅力は、自然素材である木材を使うこと。癒しの効果があるとされていますし、小学校を木造校舎に建て替えたところ、子どもたちに健康面で良い効果があったという事例も。また、木と鉄では熱伝導率が違うため、冬は木造の家の方が暖かいとも言われています。
木造は一般的にシロアリに弱いと思われがちです。通常、木造住宅では防蟻用に薬剤を使うわけですが、古民家の内部を見てみると、同じ建物でもシロアリの被害を受けていない柱があり、材種によって被害が大きく違うことが分かります。そして、被害を受けていない木材の代表格がヒノキです。
実は、木材のなかでもヒノキは、シロアリを防除する薬剤を注入する必要がありません。それは、ヒノキがシロアリに強い材種であると認められているからです。ヒノキの匂いの成分でもある「ヒノキチオール」という成分が、シロアリを寄せ付けない効果を発揮します。
ちなみに最近では、自然素材であるホウ酸が、シロアリ防除の薬剤として認められました。虫を殺すからには、それ相応の強い薬剤になるわけで、これを使うことに不安をお感じになる方も多いと思います。ただ、ホウ酸であれば人体にも害がなく、安心してお住みいただけると思います。
そのほかにも、基礎部分に特殊なパッキンを使うことで、シロアリをはじめとした外部からの害虫をはねのけるといった新たな技術も開発されており、こうした部材を一緒に使うことも増えてきています。
丈夫で長持ちする家を建てるためには、その地域の気候風土に合わせることが大事です。そのためには、その地域で育った素材を使うことが良いとされています。地域の材料を積極的に使えば、地産地消や森林の環境保全にもつながります。
平成20年からは「長期優良住宅」という新たな制度が始まりました。この法律制定に合わせて「長期優良住宅認定制度」が創設され、定められた基準以上の性能を持ち、維持保全に関する計画を作成した住宅は、「長期優良住宅」として認定され、税制面の優遇を受けられるようになったのです。
そして現在、長期優良住宅の認定を受けていることが、長持ちする家を見極める判断基準のひとつになっています。いい家を建ててもほったらかしでは長持ちさせることはできません。長期優良住宅であれば、維持保全計画が認定基準の一つに定められており、完成後のメンテナンス計画がきちんと立てられている点でも安心できます。
家に使う部材については、アフターフォローが行き届いた商品を選ぶのもポイントです。最近では、一風変わったオシャレな屋根の家を目にすることもあります。このような建物、見た目はとても素敵で興味深いのですが、屋根の仕上げ方が複雑で、雨漏りの原因になってしまうこともあると言われます。デザインのこだわりももちろん大切ですが、暮らしやすく、メンテナンスのことなども考慮して形状を決めたいところです。