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2018/01/15
新しい家を購入する際、最も気になるポイントの一つが「耐震性」。でも、実際のところ、素人には地震に強い家かどうかの見極めは難しく、業者選びに迷ってしまうという方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、森大建地産株式会社の森秀樹さんに、近年の大地震の被害状況を踏まえながら、「そもそも地震に強い家とは?」「どんな点をチェックすればいいのか?」など、耐震に関する疑問にお答えいただきました。
建物の耐震性を説明する時、「耐震」「免震」「制震」の3つの言葉が使われることが多いです。その違いがいまいち分からない人も少なくないはず。そこでこれら3つの言葉について簡単に解説したいと思います。
まず「耐震」です。これはそもそも建物の構造を強くすること。設計段階できちんと計算を行い、それに基づいて地震に強い建物を建てていきます。
「免震」とは、基礎と構造体の間に、免震装置を入れて揺れを防ぐ仕組みのこと。揺れを吸収して地震の被害を最小限に抑える方法です。ただ、建物が揺れ動くために余分な敷地が必要ですし、それ相応の費用もかかるのがデメリット。また、地震だけでなく、台風などの強風でも揺れる可能性があります。マンションで採用されるケースは比較的多いですが、戸建て住宅で導入しているというケースはごくまれです。
最後に「制震」は、建物の揺れを軽減させる仕組みのこと。建物の内部にオモリやダンパーといった制震部材を込むことで揺れを吸収します。注意したいのは、きちんと保障があるかどうか。なかには制震装置に保障がないこともありますので、建築前に確認しておくことが重要です。
建物の耐震性を考える時には、あくまでも基本は「耐震」です。耐震等級は1~3までありますが、制震装置を設置するなら、耐震等級3の建物にすべきです。耐震等級1の建物に付けてもあまり意味はありません。
住宅が地震に強いかどうかを判断するためのポイントは、大きく「地盤(土地)」と「構造」の2つがあります。
まず「地盤」についてですが、地震に強いかどうかの判断は、建物が建っている土地がどのような形状であるかで大きく左右されます。例えば、もともと山林だった場所を切り拓き、平地に整備する「切土」でできた土地であれば、地盤が固いですから地震に強いと言えます。その一方で、低い地盤や斜面に土砂を盛り上げて平坦地を作った「盛土」の場合、どうしても地盤が柔らかく、地震にも弱くなります。
住宅の基礎を作る時には、この地盤の状況を調べたうえで、どうすれば強くなるのかを判断して基礎を決定します。地盤調査をもとに、どれぐらいの杭を打てばいいのかなどを決めていくわけです。
では、そもそも地震に強い土地を選ぶためにはどうすればいいでしょうか。できれば、地元の人に直接話を聞くのが一番良いでしょう。ただ、なかなか話を聞く機会もないと思いますので、そんなときにはインターネットで資料を調べることもできます。現在は地盤の状態が簡単に分かる便利なサイトがありますから、これらを利用して自分で下調べしましょう。
●全国ゆれやすさMAP
http://www.jjjnet.com/jishin_yure_map.html
●地盤安心MAP
http://jam.jibanmap.jp/map/main.php
耐震性を左右するもう一つのポイントが「構造」です。基礎の構造はもちろんのこと、建物を支える柱や壁がしっかり作れているかどうかも、耐震性に大きな影響を及ぼします。
建物が柱や壁によってきちんと支えているかどうかを測る目安が、「直下率」という数字です。この「直下率」は、1階と2階の柱や壁の位置がどれだけ合致しているかの割合を示しています。設計図面を確認すれば、どれだけ合っているのかが分かりますが、これが100%に近ければ近いほど、その分地震に強い家ということになります。
最近の住宅でよく見かける大きな吹き抜けなどが典型ですが、柱や壁の位置が極端に異なる空間は、当然ながら直下率が低くなり、建物全体の耐震性を弱めてしまいます。その一方、ビルはそのほとんどが直下率100%で、とても地震に強い構造になっています。
ちなみに、一般的な分譲住宅の大半は耐震等級1です。最高クラスである耐震等級3を満たしている場合、耐震を全面的にウリにしているはずですから、特にアピールしていなければ、耐震等級1であると考えてほぼ間違いないでしょう。また、同じ耐震等級の住宅であっても、家の形状などで地震への強さは異なります。コの字型、いびつな形の家より、真四角な家の方が地震に強いです。
建築基準法で認められている住宅の耐震基準は、耐震等級1です。大地震が発生しても倒壊せずに命を守ることはできますが、基本的に以後は住めなくなる場合がほとんど。一方、耐震等級3であれば、大地震でも損傷は限定的で、そのまま住み続けることができます。
ひとつ注意したいのが、「耐震等級3仕様」という文言です。この場合、きちんと構造計算がされていない場合も考えられますから、家を建てる前に構造計算書類を確認させてもらうことが大事です。こちらが確認を求めた時、書類を見せてくれるかどうかも良い業者の条件のひとつ。提示を渋るようなら、その業者を選ぶのは控えた方が賢明かもしれません。
耐震補強は、家を建ててからでも可能です。住んでいる家が地震に強いかどうかは、昭和56年以前の建物かどうかが目安。これ以前の建物は、昔の耐震基準で建てられているため、地震に弱い可能性が高いからです。国が簡易耐震診断の取組みを行っていますから、ぜひこうしたものを活用して早めに調査をしましょう。
昭和56年以前の建物の耐震診断は無料で行えます。耐震補強をする際の補助金が出ているものもありますのでぜひチェックを。リフォームを依頼する業者は、きちんと耐震診断を行い、報告書を出してくれる業者を選ぶのがおすすめです。補強の実績がどれだけあるのか、補強に対する構造計算やシミュレーションをきちんと出してくれるかどうかも確認しましょう。