特集
2018/04/16
不妊症とは、妊娠を希望して通常の夫婦生活を営んでいるにも関わらず、子どもが1年以上できない状況のこと。晩婚化が進む中、実に6組に1組の夫婦が不妊に悩んでいるとも言われ、不妊治療に取り組むカップルは増え続けているのが現状です。不妊治療には様々な方法がありますが、体への負担が少なく始めやすいのが「漢方による不妊治療」です。そこで今回は、薬剤師・鍼灸師の高橋美紗代さんに、漢方における不妊治療について詳しくお聞きしました。
東洋医学の専門家
浅野 美紗代
漢方による不妊治療とは、漢方薬を処方することで、妊娠しやすい体の状態をサポートすること。漢方薬を飲んでもらうことで、子宮を温めたり、子宮の内膜を厚くしたり、卵子の質を良くしたりして妊娠力を高めます。
不妊については、その原因の半分が男性にあるとも言われますので、男性についても、精子の運動率を高めるなど、どうすれば不妊症を改善できるのかを見ながら、その人の体質にあった漢方薬を処方するようにしています。
漢方薬がもたらす効用は、不妊症に限定した話ではありません。体のバランスを整えることで疲れにくい体になったり、精神的にも安定したり、さまざまな良い変化をもたらしてくれます。そして結果的に、その体質改善が妊娠しやすい体の土台作りに繋がります。
漢方薬の効き目はなかなか分かりにくいものですが、生理痛が改善したり、経血の色や質が変わったりと少しずつ変化が現れてきます。そして、自分の体のどの部分に不調があったのかが、徐々に実感できるようになってきます。
不妊症の方に処方する漢方薬は、カウンセリング、体の状態の確認、病院の診断結果などを踏まえた上で内容を決めていきます。
不妊治療で通院している場合には、その治療結果が分かるもの、女性については基礎体温表や生理周期がわかるものを持ってきてもらえると、より的確なカウンセリングを行うことができます。
カウンセリングでは「どんなことを聞かれるの?」と不安をお感じの方もいるかもしれませんが、最初からデリケートな部分まで深く踏み込んでお聞きすることはありませんのでご安心下さい。カウンセリングに最初に訪れるのは女性のみの場合がほとんどですが、より適切な処方を行うためにも、できればご夫婦で来ていただけるのが理想です。
1~2週間に1回はカウンセリングを行い、体の状態を定期的にチェックすることが必要です。体の状態を見ながら、処方する漢方薬を変えることもあります。
漢方による不妊治療のメリットは、体質改善をすることで体の状態を良くし、丈夫で健康な赤ちゃんを産むことにもつながる点です。体質が改善されれば、より良い卵子・精子を作ることができるようになります。
赤ちゃんを望んでいる方は、卵子を育てるのに半年はかかります。そのため、妊娠したい時期の半年前から、漢方による体質改善に取り組み、質のいい卵子を作るようにします。
漢方による不妊治療のデメリットは、保険が利かないこと。ただ、病院での不妊治療もお金がかかります。これに比べれば金銭的な負担は小さいですし、漢方で体質を改善することにも繋がるので、メリットの方が大きいと思います。
なお、一般的に薬は併用できますが、病院で漢方薬を処方されているケースもありますので、念のため、併用できるかどうかをチェックするようにしています。
漢方薬での不妊治療に取り組むご夫婦は、やはり20代よりも30~40代の方が多いです。なかには、病院でさまざまな不妊治療を試した結果、心身ともに疲れ果ててしまったという方もいます。
処方される漢方薬は、特に決まりはなく、夫婦の体質などによって変わります。何種類もの漢方薬の中から、その人に必要と思われる漢方薬を組み合わせて処方します。妊娠しても安産や産後の体力作りのために、無理なく続けられる漢方薬を処方し、そのまま飲み続けてもらうこともできます。
最近は晩婚化が進み、出産する年齢が徐々に遅くなってきていますから、結婚前から生活習慣を改め、漢方薬などを上手く取り入れながら体質改善を図っておくのが良いでしょう。