特集
2018/04/23
ペットといつまでも一緒に暮らしたい。そう願っていても、万一自分が世話することができなくなったら…。最近では、ご高齢の飼い主が増えており、「自分が先立った時が心配だ」と、ペットが行き場を失うことに不安に感じる方も少なくないようです。また、それ以外にも、さまざまな事情でペットを飼うことが難しくなり、引き取り先に困ってしまうケースもあるようです。そこで今回は、ペット信託専門の行政書士に、ペットが飼えなくなった時、飼い主の責任として何を考え、どんな方法を取ればいいのかをお聞きしてきました。
中日教えてナビ
編集部
ペットを飼い始める時には、自分に万が一のことがあった場合、残されたペットがどうなるのかをきちんと考えて飼い始めることが大切です。特に、65歳以上の方の場合、自分が先立ってしまうことも考えておかなければなりません。ちなみに地域によっては、高齢の方が動物の里親になることを条例で認めていないケースもあります。
まず確認すべきなのは、自分以外にペットを世話してくれる人がいるかどうかです。世話ができるご家族がいればいいですが、他人にお願いする場合、トラブルになることも少なくないからです。
例えば、犬の場合、一般的に顔が尖った日本犬などの犬種は、飼い主以外の第三者が飼い始めた場合になつきにくく、問題行動を起こしやすいとされています。逆に、顔が丸い犬種は、人になつきやすいと言われます。また、大型犬の場合、本人だけでなく引き取った人も世話が大変になるため、小型犬の方が引き取ってもらいやすいこともあります。犬を飼う場合には、こうしたことも考慮に入れながら慎重に考えるようにしましょう。
ペットに関する出費は、長年にわたり続いていくものです。一般的に犬の場合で、年間20~30万円、猫の場合でも20万円ほどかかると言われます。ペットを飼い続けるには、エサ代のほかにも、病気やケガをしたときの病院代や、万が一の時のための保険代など、何かとお金がかかるものだと理解しておくことが大事です。
特に、猫は子どもが増えやすいですから、まずは子猫が生まれても世話ができないようであれば、去勢手術をしておくといった対策を講じておく必要があります。手術費用は数万円ほどかかるのが一般的ですが、自治体によっては補助金が出るケースもありますので、事前に調べておきましょう。
ペットを飼うなら一生で200~300万円は見ておかなくてはいけません。責任を持って飼い続けるためにも、安易にペットを飼い始めてしまわずに、お金の工面ができるかどうかをきちんと確認しておきましょう。
さまざまな事情でペットが飼えなくなってしまった場合には、まずはNPOや動物愛護センターに相談するようにしましょう。
最近は、NPOや動物愛護センターでも、引き取りを前提に考えてくれるようになってきました。殺処分することは以前に比べてかなり少なくなっています。ただ、犬は引き取り先が見つかるケースが多いですが、猫は見つかりにくいのが実情です。いずれにせよ、飼い主の最後の務めとして、引き取り手が見つかるまで責任を持って対応すべきです。
犬の場合、子犬であれば里親に出されることが多いですが、老犬だと里親が見つからず、老犬ホームに引き取ってもらうことが多くなります。ペットシッターでも1ヵ月に10万円ほどかかり、老犬であっても1年で100万円くらいの費用は見ておく必要があります。
できれば費用を抑えたいかもしれませんが、安価なNPOの場合、劣悪な環境で育てられることもあるので要注意。ひどい環境で飼育されることがないよう、自分の目で確かめたうえでNPOを選ぶべきです。ネットである程度調べることもできますし、「条件はどうなのか」、「シェルターや老犬ホームと提携しているか」など、こちらの質問に丁寧に答えてくれる場所を選ぶのがよいでしょう。
独りでペットを飼っており、自分が亡くなった場合に問題になるのは、「お金」と「世話をする人」です。
身内で面倒を見てくれる人がいるかどうかを確認し、自分の子供に世話を託すのであれば、その費用として数百万円を渡しておくといった方法が考えられます。ただ、あまりに金額が大きいと、相続税が発生する場合もありますので気を付けましょう。
また、身寄りがない人の場合には、あらかじめ引き受けてくれる人とペットの養育費について信託契約をしたり、万が一の時に備えてNPOに依頼したりするなど、事前に対策を講じておくべきです。
ちなみにアメリカでは、ペットへの遺産譲渡が認められていますが、日本の法律ではできません。ただ、最近では、飼い主にもしもの事があった時、残されたペットがその後も不自由なく幸せな生涯を送るための資金と場所を準備しておく「ペット信託®」という仕組みもあります。犬や猫だけでなく、どんなペットにも利用できる保険のようなものです。
また、遺言書にペットの引渡しについて明記することも可能です。負担付遺贈として、ペットの世話をしてくれることを条件に財産を渡すことができます。ペット信託®のように、ペットの様子と養育費を信託監督人が監督する仕組みはありませんが、きちんと育ててくれると信頼できそうであれば、遺言を使った方法を取るのもいいでしょう。