特集
2018/05/14
「両親に家事や育児を手伝ってもらえたら・・・」。そんな風にお考えの共働き夫婦にとって、二世帯住宅はとても大きなメリットがあります。親世代が持つ土地を活用し、一緒に家を建てれば建築費も抑えられ、税制面でも優遇されます。ただその一方で、お互いへの十分な配慮を怠れば、大きなトラブルに発展しかねないのも事実です。そこで今回は、二世帯住宅を建てる前にはどのような点を注意すべきなのか、どんな間取りを選ぶのがベストなのかなどについて、株式会社新和建設の後田文子さんに話をお聞きしました。
暮らしを創造
後田 文子
二世帯住宅のメリットは、実にさまざまなものがあります。例えば、共働きのご夫婦の場合、両親と一緒に住むことで子どもの面倒を見てもらえるのは非常に大きなメリットです。また、親世代にとっても、子どもや孫と同居することで毎日の張り合いや生き甲斐を得ることにつながります。普段からお互いに元気な顔を確かめ合うことができ、余計な心配をしなくて済むのも良いところでしょう。
また、費用面ではキッチンやリビング、浴室などを二世帯で共用する場合には建築費用を抑えられますし、水道代や光熱費といったランニングコストの節約にもなります。
二世帯住宅に対する補助金は基本的にありませんが、不動産取得税、固定資産税、登録免許税などの税金の優遇がいくつかあります。不動産取得税は各世帯で1200万円を控除、固定資産税は新築後、3年または5年間各世帯の税額を2分の1に軽減。そして登録免許税は各世帯ともに税率が0.4%→0.15%に軽減されます。
詳細は専門機関にご確認ください。
二世帯住宅でも、三世代が同居するような大家族から、単世帯とほとんど変わらない小家族まで、さまざまな家族構成が考えられます。
そのため、家づくりを始める前に、「何人で住むのか」、「家族構成はどうなっているのか」、「夫の両親or妻の両親のどちらと住むのか」、「どんなライフスタイルが最適なのか」、「食事は一緒なのか」といった事柄について、家族会議を開いてきちんと話し合うことが重要です。
また、ライフステージによっても重視すべきポイントは変わります。「子育ての協力が欲しい」「安心して老後を迎えたい」など、親子のニーズを互いにくみ取りながら、親世帯の年齢や構成、子世帯の働き方、子どもの年齢などを踏まえ、未来のライフイベントにも視野を広げて考えるようにしましょう。
例えば、夫の両親と住む場合には、奥さんへの配慮が肝心です。2人の主婦が気兼ねなく暮らせるように、家事のスペースは分離すること。その上で、対外的には一軒の家としてのまとまりを印象づけるプランニングが良いでしょう。一方、妻の両親と同居する場合には、新たに家族に加わるご主人の立場を尊重し、別世帯であることが分かるような作りにするのが良いです。そして、実の母娘である2人が協力して家事をできるようにするのがお勧めです。
同じ二世代住宅でも、どの部分を共有し、どの部分を別々にするのかによって、大きく「完全同居」、「共有同居」、「別々同居」の3つのタイプが考えられます。
完全同居とは、ひとつ屋根の下で全員が一緒に暮らすタイプです。玄関やリビング、ダイニング、キッチン、浴室など、住まいの大部分を共有します。プライベートな空間はそれぞれの個室のみで、ひとつの大家族として助け合いながら安心して暮らせるのがメリット。ただ、ほとんどの時間を一緒に過ごすため、お互いへの配慮や気遣いをすることが大切です。
共有同居は、玄関やキッチン、お風呂など、住まいの一部を必要に応じて共有するタイプです。キッチンと玄関は共通、玄関以外はすべて別々など、家族の暮らし方によって様々なバリエーションが考えられます。同居ならではの安心や快適さ、別居ならではの自由度の高さをうまく両立させながらプランを考えることが大事です。
別々同居は、玄関から浴室まですべてを分離するタイプです。1つの住まいを完全に2つの独立した空間にします。上下の階で分けたり、メゾネットタイプにしたりする方法があります。また、このタイプでは、区分登記という方法が使えるため、二世帯別々に融資が受けられるメリットもあります。
親世代と子世代では生活スタイルが異なりますから、どれだけ仲が良い親子であっても、予算や土地に余裕があれば、お互いが気にせずに生活できる「別々同居」のスタイルにするのがお勧めです。たとえ、実の母娘だからといって必ずしもうまくいくわけではなく、遠慮なく何でも話せる分、かえってケンカになり、うまくいかなくなるというケースも散見されます。
ただ、別々同居は、予算や敷地の問題で難しいことが多いです。予算が合わない時は、すべて別々ではなく、個々のライフスタイルに合わせてどこを妥協するのかを考え、キッチンやお風呂などの共有を検討していくことになるでしょう。
普段から気心知れた実の親子であっても、二世帯住宅はトラブルの火種を生みがちです。だからこそ、二世帯住宅のメリット・デメリットも十分考慮しながら、慎重に家づくりを考えていくことがとても大事です。