特集
2018/08/06
今年は全国的に記録的な猛暑が続き、熱中症で救急搬送される人が続出。今後もしばらく30℃を超える厳しい暑さが続きそうです。そんな暑い夏こそ注意したいのが脱水です。こまめな水分補給を怠り、脱水症状を起こせば、めまいや立ちくらみなどの症状が出るだけでなく、心筋梗塞を引き起こすなど命に関わる危険性もあります。そこで今回は、大西内科ハートクリニックの大西勝也先生に、今年の夏こそ知っておきたい脱水症の注意点を詳しくお聞きしました。
心臓病治療のプロフェッショナル
大西 勝也
脱水にならないためには、のどが乾いた時に水分を摂ることが基本です。特に小さな子どもの場合、目の前の遊びに夢中になり、のどが乾いているという感覚を忘れてしまっていることがあります。親御さんがこまめに水分補給を促すことが大事です。一方、高齢者の場合も、若い時に比べてのどの乾きを感じにくくなっています。自分では「まだ大丈夫だ」と思っていたとしても、早めに水を飲み、こまめに水分補給をすべきです。
水分を摂る際には、アルコール、コーヒー、紅茶、濃いお茶は避けるようにしましょう。これらは利尿作用があり、せっかく飲んでも尿として出てしまうからです。麦茶やお水といったカフェインがないものを選んで飲んでください。また、ジュースも糖分が多く、血糖値が上がりやすいので注意が必要です。若い人でも、糖尿病の人や、ダイエット中の人は控えた方がよいでしょう。
炎天下で運動したり汗をたくさんかく子どもや、熱がこもった湿気の多い環境で作業する人は、水分だけでなく塩分を摂ることも忘れないでください。ただ、塩を摂り過ぎると血圧が上がります。夏場にはかえって塩分を摂り過ぎてしまうこともありますから、大人でも血圧が高い人は、塩分は摂らず、水分だけを摂取するようにします。
では、1日にどれぐらいの水分を摂ればいいのでしょうか。個人差がありますが、ご自身の尿の量と回数を目安にするのがいいでしょう。子どもが遊んでいるときは、500mlペットボトル1本分は飲んだ方がいいです。特に、炎天下でスポーツをしているような時は、1リットルぐらいを目安に飲むようにして下さい。のどの乾きが潤うまで、しっかり飲んでもらえればいいです。
摂取した水は必要な分だけ体に吸収され、余分な水は尿として体の外に排出されます。ただ、たくさん汗をかいた時などは、十分な水を飲んだとしても、あまり尿が出ないことがあります。ちなみに、尿の色は脱水状態になると濃い黄色になります。目安として覚えておくとよいでしょう。
脱水症状に陥ると、血圧が急激に下がり、全身の倦怠感、めまい、力が入らない、立ちくらみ、ろれつが回らない、などの症状が起こります。また、視界が黄色くなってきたり、尿があまり出なくなったりすることもあります。さらに脱水が進んでいくと、頭痛が起こったり、自律神経が崩され、より強いめまいや食欲不振などが生じてきたりします。
とりわけの夏の脱水は、体温が上がっていることが多いです。こうした症状が出るようであれば、すぐさまおでこや首などを冷やし、脳に行く血液の温度を下げることが大事になります。
脱水で体調が悪くなり、血圧を測って上の血圧が100を切っている場合には、病院で見てもらった方がいいでしょう。異常に早く気付くためにも、普段の血圧を自分で把握しておくべきです。自分が高血圧であるにも関わらず、それに気付いていない人は特に危ないです。
ほかにも注意が必要なのが、コレステロール値が高い、糖尿病、生まれつき血液が固まりやすいなどの素因がある人です。脱水になった時には、たとえ若くても心筋梗塞が発生する可能性があります。高齢者の場合は、さらに危険性が高く、脱水によって心筋梗塞や脳梗塞を起こしてしまうこともあります。いずれにしても、自分の体のことを普段からきちんと理解しておくことが大事です。
脱水は、必ずしも屋外で起こるとは限りません。たとえ家の中でも、熱がこもった環境にいれば、脱水になる危険性は十分にあります。室内だからといって過信は禁物です。特に夏の暑い時期、エアコンがかかっていない部屋の中は要注意です。脱水を起こして動けなくなる人も少なくありません。
暑いと感じるようであれば、無理せず扇風機やエアコンを使い、室内の温度を下げることが大切です。エアコンを付けるのは体に悪いと考えている人もいるようですが、むしろ暑い方が体に悪く、時には命の危険を伴うこともあります。
ご自宅以外でも、例えば、ビニールハウスでの農作業など、空気が抜けないような密室環境で作業する時は、脱水や熱中症を引き起こしやすいので十分に気を付けるようにしましょう。