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相続手続き、何からやればいいの? いざという時に困らない相続手続きの基本を専門家に聞いてみた。

2019/12/23

大切な人が亡くなった後、遺族がやらなければいけないことに相続手続きがあります。相続手続きには期限が定められているもの、正しく相続手続きを進めないと、残された預貯金が引き出せなかったり、故人が残した借金を返済する義務が発生したりと、予期せぬ不利益を被る可能性があります。そこで今回は、相続手続きに詳しい税理士の木下佐代乃さんに、スムーズな相続手続きの進め方についてお聞きしました。

木下 佐代乃

岡崎で相続税業務をメインとしています

木下 佐代乃

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年金の手続きは早めに済ませましょう。そして、遺言書の有無も確認を。

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亡くなった方の健康保険・年金については市役所・社会保険事務所で、速やかに行います。遺族年金の手続きも併せて進めましょう。手続きが遅れてしまうと、受給も遅くなってしまいます。
次に、遺言の有無の確認です。「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2つのケースが考えられます。自筆証書遺言は自宅で保管されているケースが多いと思われます。一方、「公正証書遺言」であれば、全国の公証役場で確認できます。(令和2年7月10日より自筆証書遺言が法務局で保管ができ、検認が不要となります)
遺言が残されていない場合には、遺産分割の協議をします。なお相続人全員が合意すれば遺産分割をやり直すことはできますが、税金面では、遺産分割のやり直しは贈与となることも。例えば、不動産の相続登記後、相続税の負担の軽減を目的とする遺産分割のやり直しにより、他の相続人が相続することは、相続税の申告期限内であっても、贈与となり、贈与税が課税されます。そのため、遺産分割は慎重に進めましょう。

相続手続きをしないと自由に預貯金を引き出せませんが、仮払いとして150万円までなら払出し可能です。

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では、きちんと相続手続きを行っていない場合、どんなことが起こるのでしょうか。相続の手続きが行われない場合、亡くなった方の全ての遺産は相続人全員の共有となり、預貯金も自由に引き出すことができなくなります。
令和元年7月1日より、家庭裁判所の判断を待たなくても仮払いとして、それぞれの法定相続人が、各金融機関の預貯金債権の額(口座基準)×1/3×法定相続分(150万円を限度)に単独で払い出すことが可能となりました。

死亡届を提出後、それを元に税務署から相続税のお尋ねが届きます。

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市役所に死亡届を提出すると、亡くなった月の翌月末までに、市役所から税務署に通知されます。税務署は、亡くなった方の過去の確定申告の状況や、固定資産税の課税明細、保険金の調書等に基づいて、亡くなってから5~6ヵ月位に遺族に相続税のお尋ねを送ってくることがあります。ご自身での申告が難しい時は、税理士等にご相談を。
また、亡くなった方の確定申告をする場合には、1月1日から亡くなった日までで区切り、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に法定相続人が連帯して準確定申告を行います。

不動産の名義変更や戸籍の入手に困ったら司法書士へ。

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相続手続きには専門的な知識が必要で、だれに相談すればいいのか分からないという方もいらっしゃるはずです。ご自身での手続きが難しい時は、司法書士が不動産の名義変更だけではなく、戸籍の収集、預金の手続きも一緒に行って頂けます。
また、相続放棄をしたい場合には、原則ご自身が相続人になったことを知った時から3ヵ月以内に家庭裁判所で手続きをしなければいけません。借金などのマイナスの財産がある可能性があるなら、早めに調べておく必要があります。銀行からの借り入れであれば分かりやすいですが、個人的な借入れなどは要注意です。
相続は、法定相続人の間で簡単に話がまとまる状況であれば、戸籍を揃えるだけで比較的簡単に相続が進められます。ただ、戸籍を揃えるのが困難、法定相続人が多くて話をまとめるのが難しい、不動産が多いなどといった場合には、専門家に相談するのが賢明です。

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