特集
2020/01/15
部下の失敗に怒りを覚え、思わず声を荒げて非難してしまった…。そんな経験、あなたにもありませんか? 「私も厳しい指導を受けて育てられた」なんて考え方は若い社員に通用しないのはもちろん、下手をすれば「パワハラ」と受け止められ、最悪の場合、現在の職を失うケースも。だからこそ今、怒りと上手く付き合う「アンガーマネジメント」が重要になっているのです。そこで今回は、はぐくみサポート ゆめたまごの稲垣真紀子さんに、職場でのイライラの対処法について詳しくお聞きしました。
未来をはぐくむ子育て教育セミナー講師
稲垣 真紀子
人に注意する、叱ることの目的は、「相手へのリクエスト」です。相手にどうして欲しいのかを理解してもらう。その要望を伝えるということが目的のはずです。ただ、上司の方がどれだけ正論を言っていたとしても、声を荒げて非難したり、人格を否定したりするようなことがあれば、部下は上司からのリクエストを受け入れにくくなってしまいます。
伝える時のポイントは、「I(アイ)メッセージ」であること。「私は~」を主語にして、冷静にリクエストを伝えることが重要です。相手の気持ちに十分配慮しながら、「なぜそうして欲しいのか」「どこが問題なのか」を必要に応じて具体的かつ簡潔に伝えるようにしましょう。
価値観が違う立場の人と話しをするとき、苛立ってしまうという人は多いはずです。そもそも怒りとは、「~するべき」という自分の理想や願望と、現実とのギャップが生じた時に起こるものです。この「べき」の許容範囲は、人それぞれです。地域や時代、世代によっても違います。まずは自分がどんな「べき」を持っているのか、どこまで許容できるのかの判断基準を明確するようにしましょう。
そして、相手の「べき」を知り、理解できれば、無駄に怒りを感じることがなくなるはずです。普段から自分の許容度を上げる意識を持ち、基準を明確にしていくことが、アンガーマネジメントにつながっていくと思います。
上司の立場で注意すべきことは、普段から部下とコミュニケーションを取り、人間関係を良好にしておくことです。常日頃から、会話しやすい雰囲気づくり、機会づくりを心掛け、コミュニケーションの量と質を上げるようにしましょう。
また、部下の性格を理解することにも努めましょう。行動特性、個性はそれぞれの持ち味でもあります。一人ひとりの部下の成長を願い、個々の能力に応じた指導、助言をするようにしましょう。
大切なのは、多様性、価値観の違いをできるだけ受け入れることです。許容度を上げながら、個々の力を発揮できる環境づくりをすることが重要です。そのためにも、様々な立場、個性を持った人達が、モチベーションを維持して力を発揮するために、共有できるルールや目標を明確にし、ゴールに向かって共通認識を持てるようにまとめていくようにしましょう。
では、部下の立場からは、上司の怒りをどのように受け止ればいいのでしょうか。
例えば、怒りの感情に任せて注意をしてくる上司がいたとします。その怒りの裏側には、「不安」、「心配」、「期待を裏切られて悲しい」などの第1次感情があります。まずは上司の怒りの感情の奥にある「本当の気持ち」に目を向けるようにしましょう。怒りの裏側にある想いを受け止め、理解する姿勢を見せることで、怒りそのものが落ち着くことにつながります。ただ、あまりに上司が感情的になりすぎ、話にならない場合に、落ち着くまで一旦その場を離れるタイムアウトという対処法を取るのも有効です。
また、「怒りのピークは6秒」だと頭に入れておくと、衝動をコントロールしやすいと思います。もし注意をされてカーッときたら、感情に任せた言動で後悔しないよう、まずは6秒待つこと。自分の気持ちを落ち着かせるための言葉を心の中で唱えたり、深呼吸をしたりするなどして、最初の6秒をやり過ごしてください。
部下の立場で配慮すべきことは、それぞれの立場、価値観の違いを尊重し、事実と思い込みを分けることです。「自分だけが注意される」「自分は嫌われている」といった思い込みがあると、モチベーションが下がるばかりか、本来の力を発揮できなくなります。
事実と思い込みを分け、なぜそれが必要なのか、どうすれば実現可能なのかを理解し、職務を適切に果たすことを考えましょう。
働く上で、常日頃から職場で心掛けておきたいのは、職場のルール、優先事項を意識して行動することです。そうすることで不要なトラブルを未然に防ぐことができます。また、上司の場合と同様、それぞれが持つ「~するべき」という考え方を理解し合い、許容度を上げておくことが大事です。立場や価値観の違いを尊重し合いながら、コミュニケーション力を上げていくことが、仕事も人生も豊かにすることにつながるはずです。