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阿部 一雄

車いす建築士によるバリアフリー提案!

阿部 一雄 あべ かずお

阿部建設株式会社

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事例・コラム

2021/11/30 00:00

実例(1)「バリアフリー設計の本質/F様邸」前編

障がい者とその家族の潜在的バリアを取り除き、そして関係する周囲の人に対しバリアフリーの本質を伝え、理解させる事がいかに大切か。
通勤途中に交通事故にあい脊椎損傷のため車いす生活となったF様の実際のバリアフリー住宅の改修工事をご紹介します。

F様は車いす生活から一年余りがたちそろそろ自宅に戻り社会復帰を考える時期となり、併せて自宅のバリアフリー改修の相談を受けることになりました。まずはご家族との現状把握からスタートです。ご両親は息子が自宅に戻り社会復帰を果たしていく中で将来への疑問と不安をたくさん抱えていました。「車の運転はできるのか」「社会的支援はあるのか」「事故の補償や請求方法は」等改修工事とは異なる不安や疑問に対しても時間をかけてお話をして少しずつ解消するよう心掛けました。これからの生活や、今後何が必要になるのかといった情報をご両親と共有することで設計方針がスムーズに決まっていき、一通りの説明が終わりご両親の和らいだ表情を見て「最初の心のバリア」が解消されたと感じました。

F様ご本人とのヒアリングも多岐にわたり、運動機能の観察をはじめ車の運転や車いすの購入など社会復帰に向けてのアドバイスも行いました。リハビリ病院からはすでに(1)1階リビングの隣の和室をF様の居室にする、(2)水回りの設備一式の入れ替えの2つの改修案が示されていましたがこの提案はご両親には大きな不安として悩んでおられました。お母様はご自宅で料理教室を開いておりリビング隣の和室は使い勝手の良い空間として活用していましたがここが使えなくなります。また、1階に居室を作るのが一般的で最善な方法と思い半ば料理教室は断念せざるを得ないと覚悟していました。水回りも同様です。通り一遍的な考えだと車いすでは浴室、洗面所など高さや段差など違いが生じ全て入れ替えるのが当然と考えてしまいがちです。多大な費用の負担、これもご両親には大きな悩みとなっていました。

次回後編ではこの二つの不安をどのように解消していったのか、またその後のF様の暮らしについてお話をします。