2021/12/01 13:11
障がい者とその家族の潜在的バリアを取り除き、そして関係する周囲の人に対しバリアフリーの本質を伝え、理解させる事がいかに大切か。
通勤途中に交通事故にあい脊椎損傷のため車いす生活となったF様の実際のバリアフリー住宅の改修工事をご紹介します。
二つの不安の解決策
一つ目の不安「1階リビングの隣の和室を居室にするべきか」についてはホームエレベータを設置しもともと2階にあったF様の居室を改修することを提案。2階への移動も問題なく、ご両親も今までと変わらない生活が送れます。本人にとっても今までと変わらない住環境での生活は社会復帰をするうえで大きな希望となりました。二つ目の不安「水回り設備の総入れ替え」の解消方法、それは実際に車いすで現状の水回りを利用してみて寸法や使い勝手を検分する事でした。段差の問題や車いすの通るスペースの確認などの結果、洗面台を5cmほど上げる工事だけ行えばすべての水回り設備はそのまま流用できることがわかりました。二つの不安は何よりもF様の生活を優先するがためにご両親は本当にこれで正しいのかという疑問や遠慮が生まれてしまい本音で改修工事に向き合うことができなかった、これが障がい者とその家族の心のバリアなのかもしれません。その後リハビリ病院へも改修案を提出し改修工事に着手することになりました。
主なバリアフリー改修箇所
(1) F様お一人でも自宅を出入りできるようスロープとカーポートを設置。車いすの出し入れなど雨にも濡れずにすみます。(2)車いす専用の玄関(3)昇降機は
F様の身体への負担を勘案し、収納スペースは乗り換え用の車いすを置けるよう配慮。(4)洗面台の高さ調整、(5)ホームエレベータの設置(6)F様居室のトイレと洗面台の新設の主に6か所で抑えることができました。
17年後のF様とご両親の生活
下の写真は改修直後と17年後のリビングの写真です。今でも手を加えたところは殆どありません。お母様は料理教室をそのまま続けることができ、F様ご本人も社会復帰を果たすことができました。トータルバリアフリーコーディネーターとしてF様のご家族の生活再建に携わり、快適な暮らしに少しでも貢献できたことを実感し、バリアフリー設計の本質が垣間見えた気がします。