2022/01/05 00:00
障がい者の使いやすさ、それを介助する家族の暮らしやすさを両立できなければ本当のバリアフリー住宅とは言えません。障がい者とその家族、双方にとっての快適性を考える実例として、脊椎損傷を負い車いす生活になったN様邸をご紹介します。
通勤途中のバイク事故により脊椎損傷を負い車いす生活となったN様はご両親と同居のマンション住まいです。マンションという限られたスペースの中で障がい者であるN様とその家族双方が快適に暮らすことができるのかが今回のリフォームの大きなポイントとなりました。病院から初めに紹介されたリフォーム業者の提案では車いす生活のためにトイレスペースの拡充が必要となりそのスペースをトイレの隣にある食品庫をなくしてトイレスペースに賄うというものでした。しかし介助・介護する家族にとって食品庫をなくすことは生活スタイルを崩すことになり今後の生活の上で大きな負担となるのは明らかでした。
主なバリアフリー箇所
車いすでも使いやすいようトイレスペースをN様の部屋を少し狭くして拡大、食品庫はそのまま家族のために残すことにしました。浴室は一人でも使用可能なシャワーを浴槽横にも設置し一人でも体を洗うことができます。それ以外には車いす置き場を設けた玄関スペースの拡大、ベランダの段差解消により自由に行き来できるようにしました。
バリアフリー住宅というとどうしても障がい者のみの暮らしゃすさや改修を考えがちですが障がい者はもちろんその障がい者と一緒に暮らし、介助・介護する家族の快適性も考えなければ真のバリアフリー住宅とは言えません。双方の意見や将来考えられる生活を読み取り不自由なく生活できることがとても重要な要素となります。
バリアフリー設計、建築は障がい者とその家族により悩みや不安はまちまちであり、それぞれの要望に耳を傾け自らその悩みや不安を見つけ出してあげることが求められます。決して簡単な仕事ではありませんがそうして設計されたバリアフリー住宅が増えていくことを切に願っています。