2022/04/11 00:00
バリアフリー設計によって生きる力を引き出せることを、自転車転倒事故で頸椎損傷となり、車いす生活となられたT様の住宅を例に考えます。こちらの住宅は、屋内外を自由に行き来できるようにというT様本人とご家族の希望を考え、玄関とアプローチのバリアフリーを徹底しました。仮屋住まいだったマンションの扉が重くて開けづらいという悩みを聞き、電動で開閉可能な玄関引き戸や掃き出し窓にはリモコンで開閉できる電動シャッターをつけています。玄関は3畳ほどのスペースを取り、室内外別に使用している車いすの乗り換えができるようにしています。生活動線も、行き止まりがない回遊動線とし、車いすの使用でストレスが生じないよう、出隅部には保護用の枠を、壁には腰壁を設けました。
将来的にはヘルパーの利用とそれに伴うプライバシー確保を考え、ヘルパー専用の動線も確保しました。寝室と水回りは直線的に行き来できるよう配置し、トイレも家族用とは分けて部屋に隣接させて、ヘルパーの介助がこちらの部屋だけで完結できるようにしました。
ご家族すべての生活の質の確保にも力を入れました。床下エアコンを利用した床暖房を採用し、四季を通じて快適性を保つよう工夫しています。太陽光発電は、災害時の電源を確保し、自宅での避難も可能です。時短で負担なく家事ができるよう、玄関近くにパントリーを設け、水回りや食品庫の配置に回遊性を持たせています。
住まう人に合わせたバリアフリー設計により、積極的に動く姿勢が鮮明になり、今では新たにスポーツを始められたと聞きました。ご家族の安心感も増したようです。生きる力、前向きな思考は、環境が作り出すというよい例となっています。
生きる力を引き出す住宅とは
老いや病気、障がいは、生きる力を簡単に奪いかねません。ですが、住宅設計を工夫し、今までと変わらない生活が送れる環境ができれば、生活に張りが出て、生きる意欲を引き出すことにつながります。大切なのは、住まう人それぞれのニーズに合ったオーダーメイドの住宅設計です。また、サポートするご家族の思いや将来を考えたバリアフリーの実現も重要です。