2022/10/08 00:00
そこで暮らす人の“思い”や“生活”に寄り添う
実際にご自宅を訪問したところ、2階にある息子さんの部屋に改善の余地があることがわかりました。クローゼットの一部を使って、ホームエレベーターを設置すれば、車いすであってもスムーズに2階へ移動ができます。水まわりについても、実際に車いすに乗って寸法や使い勝手を確認してみると、洗面台のみ手を加えれば問題なく生活できるという結論に達しました。2階の自室に戻れるがどうか?というお話しを息子さんにしたところ、「戻れるなら戻りたい!」と明るい応えが返ってきました。医療関係者からは抗議の声が寄せられましたが、ご家族全員にメリット・デメリットをお伝えし総合的に判断していただいた結果、最終的には提案通りに工事が行われ、現在でも今までと変わりない生活が送れています。
バリアフリー住宅は「家族みんな」のもの
ある日突然障がいを負ってバリアフリー住宅を建築、改修しなければいけなくなった時、ご本人も家族も戸惑い、何が正解なのかわからないまま医療関係者からのアドバイスを受け入れ進めていきます。しかしそこには必ず、本人とご家族それぞれ内に秘めた思いがあります。それを打ち明けずに形だけ整えたバリアフリー住宅は、ご家族にとって本当に快適な住まいと言えるでしょうか。この先何十年と暮らしていく我が家は「家族みんなにとってのバリアフリー住宅」であり、そこには物理的なバリアも心のバリアもあってはいけません。医療関係者からのアドバイス、建築士からののアドバイス、様々な情報が飛び交う中で、何が必要で何が不要かとても難しい判断ですが、まずは「こうでなければいけない」という思い込みによって隠れてしまった障がい者とご家族の不安や遠慮を表に出し、それを取り除くことで「真のバリアフリー住宅」に一歩近づくことができます。その際にはぜひ、前回コラムでご紹介したバリアフリーコーディネーターの存在を知っておいていただけたらと思います。