2022/10/21 00:00
バリアフリー住宅では、高齢者や障がい者と同居の家族が、ともに生活の質を損なわず安全・安心に住み続けられる設計が求められます。障がいを負った時に始める家づくりは、リハビリの状況、退院までのスケジュール、そもそもこれからどう生活していけば良いのかなど、さまざまな条件と先の見えない不安の中で、まるで追い立てられるように進めるケースも珍しくありません。そんな中だからこそ、見落としてしまいがちな視点「今」と「これから」を見据えたバリアフリーが重要になります。
ご本人とご家族に必ず訪れる「変化」
以前、糖尿病を患い片足を切断した50代の男性に「自宅離れにキッチンをつくり自活しませんか?」とご提案したことがあります。元気な80代のお母様と2人暮らし。「3食母が料理を作ってくれるので、そんな大改修はいりません」と受け入れてもらえず、結局最小限のバリアフリー改修で済ませました。確かにその時はそれで不都合がなかったかもしれません。そしかし、ご本人はもちろん、お母様も着実に歳を取ります。これから先、今と同じ生活をずっと続けていくことは難しくなるのです。
「今」と「これから」を見据えたバリアフリー
バリアフリー住宅では、介護する人・受ける人の身体能力など10年・20年先を考えたうえで「どの場所に・どのような設備を・どう取り入れるか」に配慮して設計することが大切です。例えば、現時点では問題なくても数年先に同様の暮らしが困難になると見込める場合は、それを見据えた設備を整える、また、介護を受ける方に十分な体力がある場合などは、段差などのバリアによって筋力が自然と保たれるというケースもあります。不要な改装をせず費用負担を軽くすることにも繋がるため、的確な対応が求められます。
バリアフリー住宅は、家族全員が心身ともに負担がかからず快適に住み続けられる場でなければいけません。時には、つくり込み過ぎず身体の変化や暮らし方に応じて変えられる空間づくりも必要です。今の身体状況、これからの身体の変化、家族の年齢、暮らし方なども考慮しながら、将来にわたり安心・安全に暮らせるバリアフリー住宅を目指しましょう。