2023/06/01 00:00
設計開始までの長い道のり
交通事故で脊髄損傷を負ったご主人とそのご家族の土地探しからの家づくり。難航しながらも保険会社との示談交渉を重ね、土地探しも並行して行いました。車いす生活者の土地探しは、スーパーに近いなど一般的な利便性に加え道路状況や坂道の勾配などにも配慮しなければいけません。設計開始までには時間を要しました。
バリアだらけの仮住まい
ご主人が退院した後は、家族4人で賃貸アパートに仮住まいをすることに。仮住まいにはバリアが多数存在し、ご主人もご家族も、危険や負担を感じながらの生活となりました。そこで、不動産会社と交渉し少しでも身の回りのことができるよう、リビングに洗面台設置の改修を行いました。仮住まいにおいてもバリアを減らせるよう考慮が必要です。
車いすでも2階に上がれる
約2年後に和解が成立し、土地も見つかり設計へ。仲の良いご家族のために、みんなが同じ空間で過ごせるようホームエレベーターを設置し、2階リビングを設けました。「車いす生活者は1階で過ごす」と決めるのではなく、家中どこでも行ける環境をつくることで、行動範囲も広がりQOLの向上にも繋がります。
見た目も心もバリアフリーに
ご主人も使う水まわりは、ベッドから浴室までを天井走行リフトで移動できるように一直線上にレイアウト。エレベーター前には回転スペースも確保。水まわりを含む回遊動線によって行き止まりをなくし、車いす走行もスムーズです。寝室にはご主人の趣味を楽しむスペースを設けました。見た目も心もバリアを取り除くことで実現した充実した生活は、これから前を向いて生きる活力になります。
家族みんなが自然と集う空間づくり
2階に設けたリビングにはたっぷりの日差しが入り、ハンモックを吊り下げたバルコニーでは、風と空と緑を愛でることができます。家全体は空気式床暖房でどの部屋も快適な暖かさ。家族も自然と集まる心地良い空間です。
バリアフリー住宅完成までには長い時間を要し、また、今回のように様々な課題をクリアしながら進めていく必要も出てきます。当初、障がいを受け入れられずにいたご主人も、バリアフリー住宅での暮らしの中で職場復帰も果たし、ご家族との笑顔溢れる時間を過ごしています。要介護者が孤立することのないバリアフリー住宅の力を改めて実感した実例です。