2023/09/29 09:46
※バリアフリー住宅の実例「変化を見据えた家 Y様邸」前編からの続き
Yさんは、進行性の疾患がもたらす将来への不安や仕事柄もあって、完全なバリアフリーにしなければならないと思いこんでいる自分に気が付きました。そして「バリアをちょっと残して、あとは家族・生活・体の状態の変化に合わせてつくり変えていく」という方向で家づくりは進むことになりました。
アドバイスを受けて建てたYさんの家は、2階建てで家族4人が住んでいます。1階には家族皆で使えるリビングとダイニングキッチン、2階は寝室というレイアウトです。Yさんも体が動く間は2階を上り下りするのですが、将来的に車いすでの生活となったときに備えておく工夫をしています。車いすでも出入りできるような扉の設置、介助やホームエレベーターの設置ができるスペースも確保しています。変化に対応できる段階的バリアフリーの設計というわけです。
また玄関の外には、階段と併せてスロープも付けています。敷地の都合で傾斜がきついのですが、介助を受けて車いすで玄関まで上がれるようにという工夫です。車いすを使っていないときでも、ベビーカーやキャンプ用品を載せた台車を運ぶときに活躍します。間取りについては、2人の子どもが大きくなり個室を持つことを考えて間仕切りや窓の配置を決めています。Yさんの障がいだけでなく、家族の変化にも対応できるのは大きな魅力です。
家を建ててから10年以上が経っていますが、木の香りとぬくもりを感じられる家は、Yさん一家にとって心地よい場所で、日々楽しく過ごしています。徐々に病気が進行している現実がありますが、変化に対応できる家であれば、今に“ちょうどよい暮らし”を楽しめるので、家族が心身ともに健やかに暮らすことができるでしょう。
最初から完璧ではなくても良い
バリアフリー住宅の設計において、すべてのバリアを取り払ってしまおうと考える人は少なくないでしょう。しかしながら、バリアを残すことにも大きな意味があります。将来の変化に対応できる家ならば、バリアをちょっと残した家でも安心して過ごすことができます。「自身の身体機能に合った、家族にとってもちょうど良い楽しい家」。適度にバリアを残したフレキシブルな家づくりも選択肢のひとつです。