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杉田 直樹

ヴァイオリン売買のコンサルタント

杉田 直樹 すぎた なおき

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事例・コラム

2018/10/01 14:26

日本人とヴァイオリン~その黎明期を探る (その 8 )

8. ヨーロッパとは違う、政吉のヴァイオリン作りのはじまり

さて、ここで政吉の作り上げた名古屋を発祥とし、世界一の規模を誇ったスズキ・ブランドとドイツのマルクノイキルヘン、ミッテンヴァルト、フランスのミルクールが大量生産に至った過程の大きな差に着目してみたい。これらヨーロッパ各地のヴァイオリン作りの街の繁栄は、先にマイスター、マスターと呼ばれる製作の大家が、古くは17-18世紀から、音や楽器自体のクオリティを追求し、自らの手で手工製作をしてきた歴史と実績が先にある。楽器の世界的な普及により、質を維持しながら量産し、安価な価格を実現するという考え方を原点に、マイスターたちの技術を分業によってまかなっていったのである。すなわち「個」の技術が自ずと「集団」に反映したと言える。一方で、鈴木政吉の場合はどうか。彼の場合は、日本には存在しなかった西洋音楽の急速な普及を捉え、そこに対応するべく、市場のために製作をすることから始まったと言える。すなわち、初めから「集団」でいかに良い楽器をリーズナブルに製作するかを考えたところからスタートしているのである。そして、面白いことに、彼は生涯の集大成として、晩年にいくつかの完全手工製作を行なっていくという、ヨーロッパとは逆の過程を踏んでいったところに、大いなる興味を唆られるのである。