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杉田 直樹

ヴァイオリン売買のコンサルタント

杉田 直樹 すぎた なおき

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事例・コラム

2019/05/07 12:27

世界最大のヴァイオリン名器コレクションに会して

世界最大のヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの名器コレクションの見学会、勉強会をさせていただきに、2日間の日程で台南のChimei Museum へ行ってまいりました。ここは、台湾の化学工業グループ、奇美実業の許文龍が設立したアジアを代表する博物館ですが、我々が入ったのは、一般の方が目にできる常設の楽器展示セクションではなく、ヴァイオリンの研究と演奏家への貢献を目的としたファンデーションで、まるでそこ自体が巨大な楽器庫の中と言った場所でした。Stradivari、Guarneri、Amati、Guadagniniをはじめ、名だたる名器を実際に手に取り、並べて見比べ、写真に収め、試奏させていただけるというありえない機会に恵まれました。今回は Antonio Stradivariだけでも7挺を手に取り弾かせていただき、世界最古級のAndrea Amati のチェロを拝見し、Guarneri familyに至っては 5人の楽器を全て並べられるなど、貴重な体験と勉強をさせていただきました。常識を超えた楽器の数はもちろん、驚かされたのは楽器のデータ収集量で、世界中から集め蓄積されたものが知識として大型のPCシステムに詰まっていました。楽器の画像、研究文献だけでなく、実際の演奏動画、売買記録などあらゆる分野に渡った関係データがありました。これを成しているのが、もともと製作家であったChung Dai-Ting さん。おそらく、現在、世界から認められるべき鑑定能力を持ち、イタリアだけでなく、全ての地域におけるヴァイオリン製作、弓製作の見識を持つ方です。ほんの一例ですが、通説になっていたAntonio Stradivari とAlessandro Gagliano との関係の否定、Napoli 派の始まりとOmobono Stradivari との関わりの話などは、実際の楽器サンプルを見ながら、説得力のある話として捉えることができました。丸々二日間、おそらく数千億円にものぼるコレクションに価値観念がおかしくなってしまいそうでしたが、到底見切れない数にただただ圧倒される思いでした。限られた時間の中で、一つでも多くの収穫を得るために、呑まれないように吟味させていただきましたが、続きはまた次回に持ち越しとなります。見れば見るほど、終わりなき研鑽の必要性を思い知るばかりでした。