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相続税申告の流れと手続きについて分かりやすく解説!

2022/04/05

人が亡くなられた際には多くの手続きが必要です。世帯主の変更、年金関係の手続きなどは、役所に死亡届等を出した時に教えてもらえる場合があります。こちらは自分で進めることができますが、税理士に依頼する必要があるのが、相続税の申告と亡くなられた方の確定申告です。そこで今回は、税理士の中野美代子先生に、相続税申告の流れと手順について詳しくお聞きしました。

中野 美代子

優しい女性税理士

中野 美代子

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相続税申告のタイミングと流れは

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亡くなられた方の確定申告の提出期限は、死亡した日の翌日から4カ月以内です。不動産所得や事業所得な等で確定申告を行っていた人は、1月1日から死亡した日までの確定申告(準確定申告)をする必要があります。相続人が準確定申告書を提出し、納税します。

相続税は、死亡した日の翌日から10カ月以内に申告と納税が必要です。土地等の財産の評価には多くの時間を要するため、書類の準備は早めに進めておくことが大切です。問題となるのは財産よりも債務(借金)が多い場合で、相続放棄や限定承認を3カ月以内に家庭裁判所で行う必要があるため、早めに専門家に相談しましょう。

まずは、誰が相続人になるのか戸籍謄本等を収集し、財産の内容を確認していきます。銀行等に預貯金がある場合には、亡くなられた日現在の残高証明書を取り寄せ、土地・建物等の不動産に関しても名寄帳や固定資産評価証明書等を取得する必要があります。
税理士は相続人から様々な聞き取りをし、どのように進め、何を取集したらよいかを説明し、またその書類を確認、調査等をして財産を評価します。

遺言書がある場合はその内容が優先されるため最初に確認します。遺言書がなければ、誰が何を相続するのかを決め遺産分割協議書を作成します。相続税申告書の提出後に財産が出てきた場合等は、修正申告をし、追加で納税をする場合もあります。

どういった場合に相続税がかかるの?その財産と計算方法は?

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相続税は財産が基礎控除額を超える場合に発生します。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。

<基礎控除額算定の例>法定相続人が2人の場合
3,000万円+600万円×2=4,200万円
相続財産が、この基礎控除額4,200万円を超えた場合に相続税が発生します。

相続税の対象となる財産は、現金、預貯金、不動産(土地・建物)、有価証券(株式など)、車、書画骨董品、ゴルフ会員権などです。
そのほか、相続財産とみなされるものとして生命保険金や死亡退職金があります。ただし、生命保険金や死亡退職金は、「500万円×法定相続人の数」が非課税になります。相続税がかからない財産として、墓所、仏壇、神棚などがあります。

計算方法は、財産の評価をして、相続財産がいくらあるのか計算します。相続財産から債務(借金など)やお葬式費用などを差し引き、上記で計算した基礎控除額を引きます。なお、お葬式費用の香典返し、初七日の費用などは引けません。基礎控除額を引いた課税遺産総額を法定相続分で按分し、相続税の総額を計算します。その後、相続した財産に応じて各人の相続税額が決まります。次に実際の例を見ながら説明をしましょう。

<相続税の計算例>夫が亡くなった場合

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●家族構成(夫、妻、子1人の3人家族)
●財産(現金6,000万円)
●基礎控除額(3,000万円+600万円×2人=4,200万円)
●課税遺産総額(6,000万円-4,200万円=1,800万円)
この1,800万円を、法定相続分で按分します。
妻:2分の1(900万円)、子:2分の1(900万円)
次に相続税の総額の計算をします。
900万円×10%=90万円(妻)
900万円×10%=90万円(子)
※1,000万円以下は10%の税率
相続税の総額は、妻:90万円+子:90万円=180万円になります。
次に、各人の相続税額を計算します。
例えば、6,000万円の財産を法定相続分通りに1/2の3,000万円ずつ相続した場合は、妻と子の相続税額は、相続税の総額180万円×1/2=90万円(妻)、相続税の総額180万円×1/2=90万円(子)となりますが、配偶者の税額軽減があるため、妻の相続税額は0円になります。よって、納付総額は子の相続税額の90万円となります。配偶者はかなり優遇され、その相続した財産が配偶者の法定相続分相当額以下、又は1億6,000万円までの金額については、相続税がかかりません。配偶者が全て相続する方がいいようにも見えますが、配偶者が死亡した場合、子への二次相続で相続税が高くなることがありますので慎重に遺産分割を決める方が良いでしょう。

相続税対策のポイント(生前贈与の活用方法など)

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相続税の節税対策の一つに養子縁組があります。養子縁組をすると法定相続人が増えるため、基礎控除額も増え(実子のある場合は1人まで、実子のいない場合は2人まで)、相続税の節税になります。
二つ目は生前贈与(暦年贈与)です。年間110万円までの贈与には贈与税がかかりませんのであらかじめ財産を移転しておくことで節税も可能ですが、亡くなられる前3年以内(死亡の日から遡って3年前の日から死亡の日までの間)に贈与したものは相続税の対象になりますので注意が必要です。また、現在、この110万円の基礎控除額の廃止なども検討されているようですので、今後の税制改正にも注視する必要があります。
その他、「直系尊属からの住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」の特例制度もあり、最大1,000万円まで、贈与しても贈与税がかかりません(適用期限や適用要件が細かく規定されていますので詳しくは税理士に相談してください)。

養子縁組や、贈与などで節税対策をされることはよいのですが、節税ばかりに目がいってしまい、親子、兄弟関係がぎくしゃくしてしまうこともあります。また、税金が安くなることばかり考えて大きな投資をし、借入金の返済ができなくなってしまう場合もあります。節税は、専門家である税理士やご家族とも相談しながら進めていきたいものですね。
(令和4年4月1日現在)

(イラスト:税理士中野美代子)

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