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不動産相続のトラブル対処方法と不動産活用について専門家が詳しく解説!

2023/03/20

不動産相続には様々なトラブルがあります。誰がその土地を相続するのか、遺産分割方法はどうする、売却方法は等相続人がすべて同じ考えなら問題はないのですが、人それぞれに思惑もあり簡単に話がまとまらないのが不動産相続のトラブルです。今回栄中日文化センターや大学などで講座を持ち、総合不動産コンサルタントの第一人者である後東 博さんに不動産トラブルの種類や不動産の有効活用について詳しくお話を聞きました。

後東 博

どんな相続・遺言・不動産問題もお任せ

後東 博

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相続に関するトラブルやお悩みにはどういったものがありますか

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相続に関するトラブルは大まかに分けて5つ挙げられます。

まず一番多く見受けられるのは長男相続の考え方です。相続人である子供は均分相続という法的に平等に相続されるという事を知っています。ところが、親である被相続人は戦前教育の中で家督相続の意識が高く、家督を継ぐ長男に多くの遺産を相続させようと考えます。この親子の異なる考え方が、相続トラブルの原因となります。

次に挙げられるのは相続人自体の問題がトラブルの原因になる場合があります。例えば「結婚している子供としていない子供」「子供のいない夫婦といる夫婦」、子供のいない夫婦に相続させていいのか等の問題が生じます。

遺言書に関するトラブルも様々です。同居している子供が、親に自分に有利に自筆証書遺言を書かせて、その自筆証書遺言を同居している子供が保管している場合に相続トラブルに繋がるケースも多々あります。

最近多い相続トラブルでは、介護や認知症の親を誰が面倒を見たかという「寄与分」トラブルです。親の面倒を見た子供は、他の子供よりも多く財産を欲しいと思うからです。

不動産の相続トラブルについてお聞きします

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現金や預貯金、有価証券などの金融資産は相続人間で均等に分けることができます。ところが、不動産は同じものが二つとなく、分割が容易でないことに相続トラブルの原因があります。主な財産が自宅1軒だけの人はよくもめます。主な財産が自宅だけでは、相続人間で法定相続分を分けることができないからです。また、財産の少ない人ほど相続トラブルになる傾向があります。複数の不動産や土地がある場合でも、売却困難な「腐動産」対策がこれからは重要となります。売却困難な「腐動産」とは、価値がなく売却困難な土地或はマイナスの価値しかない不動産のことです。相続したくない不動産として、サブリース契約のアパートや老朽アパートの相続相談があげられます。
「賃貸物件で収益性がある土地と収益性がない土地がある場合」「価値のあるよい土地と利用価値のない悪い土地がある場合」など相続人は誰でも収益性の高い土地、よい土地を相続したいと思い相続トラブルになります。
アパートの借金は、アパートを相続した人が当然に相続するわけではなく、相続開始と同時に、法定相続分で相続します。また、アパートの家賃収入も、アパートを相続する人が当然に相続するわけではありません。家賃収入は遺産分割協議が成立するまで、法定相続人全員が法定相続分で分割しなければならない場合もあります。

トラブルの防止方法と不動産の活用方法についてお聞きします

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前述した相続のトラブルを未然に防ぐには公正証書遺言の作成と高齢の親の財産管理を子供が後見人となって行う「生前4点契約書®」の作成が重要です。
「生前4点契約書®」とは、高齢の親の代わりに子供が後見人になり、介護などになった場合に備える「財産管理等委任契約書」、認知症に備える「任意後見契約書」を作成、また、終末医療に備える「尊厳死宣言書」や死後の後始末に備える「死後事務委任契約書」をいいます。

不動産の活用方法にも簡単に触れておきましょう。
不動産を活用する前に最も重要なことは、まず、自分の所有する土地を4つの「ふどうさん」に分けることです。今後地価が一部上昇の可能性がある土地「富動産」と今後地価を維持できる土地「不動産」、毎年地価が徐々に下落する可能性がある土地「負動産」、価値がなく売却困難な土地或はマイナスの価値しかない土地「腐動産」です。
「富動産」や「不動産」の土地で立地条件がよい場合には、アパートなどを建築してもよいでしょう。しかし、「負動産」や「腐動産」でのアパート建築はおすすめできません。賃貸経営する場合は、地価を維持できる土地で行うことと、資金回収が早くできる土地が条件となりますのでその土地がアパート経営に適しているのかを見極めが重要です。

参考文献/後東博著「新版:高齢期を安心して過ごすための生前契約書+遺言書作成のすすめ」(日本法令)

戸建賃貸住宅経営のメリットと老朽アパート問題について

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最近では戸建てに住みたいという人も多く「戸建賃貸住宅」が注目されてきています。立地に左右されにくいとか、初期費用が少ない等のメリットもありますが、節税、納税、遺産分割が同時にできるのが大きな特徴です。
 例えば、子供が3人いれば3棟建築すれば公平に遺産分割でき、現金で戸建賃貸を建築すれば、4割程度に相続税評価額を減額でき、また建築した建物を親から子供へ生前贈与すれば、子供は家賃収入を納税資金にできます。土地の有効活用の一手段として考えてみてはいかがでしょうか。 
昨今「老朽アパート問題」が取りざたされています。空室の発生、家賃収入の減、修繕費の負担などです。売却をしたくても立ち退き問題も発生します。
サブリース契約による家賃保証にもメリットもあればデメリットもあります。アパートの管理をサブリース会社に一任でき、空室が発生しても家賃を保証してくれるなどのメリットがある一方、委託管理費が割高であったり、家賃保証の免責期間設定の取り決め、管理会社が倒産した場合の保障、入居者の立ち退き交渉など多くの問題があるのも事実です。

生前契約書の重要性を理解し、様々な土地活用方法から何がこの相続不動産には適しているのかを見極めることがとても大事なことと言えます。 

参考文献/後東博著「サブリース契約の罠、サブリース契約で地主が『土地持ち死産家Ⓡ』になるワケ」(日本橋出版)

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