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相続税への備えは大丈夫? 知っておきたい相続税の基礎知識や節税対策とは?

2018/01/08

平成27年1月1日以後に発生した相続から基礎控除額が大きく減額され、申告が必要となる人の割合が高まっているといわれる「相続税」。ただ、相続税という言葉は聞いたことがあっても、一体どんなものなのか分からないという人は多いのではないでしょうか。身近な人がお亡くなりになり、自分が相続する立場になってみないと、実感が湧かないというのが本音だと思います。しかし、相続税対策は、相続が発生してから考えていては手遅れとなるケースも。事前の準備がとても大切です。そこで今回は、税理士の中野美代子さんに、相続手続きのイロハから気になる節税対策に至るまで、相続税にまつわるお話をお聞きしてきました。
(文中のイラストも中野さんが描いてます)

中野 美代子

優しい女性税理士

中野 美代子

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少額であれば相続税はかからない!相続人の人数で決まる基礎控除額とは?

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そもそも相続税とは、亡くなった人の財産を相続したときや、遺言によって財産を取得したときに納める税金のことです。ただし、相続税は、何かを相続したときに必ず発生するわけではありません。相続した財産の額によって税がかかるかどうかが決まります。

たとえば、亡くなった人の財産が、10万円の預貯金のみの場合はどうでしょうか。この場合、相続税はかかりません。相続税には「基礎控除」というものが定められているからです。基礎控除とは、亡くなった人の財産のうち、この金額までなら相続税がかからないという非課税枠のことです。この金額を超えた部分に税金が課せられることになります。そのため、財産が基礎控除額以内に収まる人については、税金を納める必要がないわけです。

基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という式で算出されます。相続人が一人の場合、基礎控除額は3,600万円になります。つまり財産が3,600万円以下であれば、相続税はかからないのです。例えば、お父さんがお亡くなりになり、相続人がお母さんと子ども2人の場合、相続人が3人ですので、「3,000万円+600万円×3人=4,800万円」となり、財産が4,800万円までは相続税がかかりません。そして、この基礎控除額を超えると、相続税がかかることになります。

亡くなった人の預貯金はすぐに凍結。相続するためにやるべき手続きとは?

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では、相続が発生したら、するべきことはどんなことがあるのでしょうか。例えば、お父さんがお亡くなりになった場合、お父さん名義の預貯金はすぐに凍結され、引き出しができなくなります。お父さん名義の通帳は、それぞれの銀行で、その財産を相続する人の名前に名義を変更する手続きを行うことになります。こうした手続きには、亡くなられたお父さん(被相続人)の出生から死亡までの戸籍謄本や相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明書、遺産分割協議書などの書類が必要ですので、それぞれの銀行に何が必要かを問い合わせるようにしましょう(平成29年5月からは、戸籍謄本一式の代わりに、「法定相続情報一覧図の写し」1枚で名義変更等ができるようになりました)。
預貯金の名義変更の手続きには時間がかかります。葬儀費用等、すぐにまとまった現金が必要になりますので、葬儀業者に葬儀費用を積み立てておくとか、相続人を死亡保険金の受取人として生命保険に加入しておく等して葬儀費用を確保しておくとよいでしょう。

相続に関してはたくさんの手続きがあります。まず亡くなられて7日以内に提出するのが「死亡届」です。そして、14日以内に世帯主変更届をはじめ、健康保険や遺族年金の手続き、電気・ガス・水道の支払方法の変更等いくつかの手続きをする必要があります。

多額の借金があった場合、「相続を放棄する」という選択も。

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たとえば、相続する財産が預金1,000万円、借金1,500万円だけだった場合、相続税はかかりません。しかし、預金1,000万円も相続しますが、借金1,500万円も相続することになるため、トータルの金額はマイナスになってしまいます。こんな時には、「相続を放棄する」という選択肢を取ることが可能です。

相続を放棄するときに必要となるのが、相続放棄の手続きです。この場合には、3カ月以内(相続の開始があったことを知った日の翌日から3カ月以内)に、被相続人がお亡くなりになった時の住所地を管轄する家庭裁判所へ「相続放棄申述書」を提出します。

そのほかにも、亡くなられた方の所得税・消費税の準確定申告と納税は4カ月以内(相続の開始があったことを知った日の翌日から4カ月以内)に行います。

そして、遺産、債務の調査と評価を行い、どの財産を誰が相続するかを決めるために遺産分割協議をし、遺産分割協議書を作成することになります(遺言書がある場合は、遺言が優先されます)。
こうして、10カ月以内(相続が開始したことを知った日の翌日から10カ月以内)に相続税の申告書を提出し、納付をしなければならないのです。また、その遺産分割協議書をもって不動産や預貯金等の名義変更をすることになります。

相続税対策には、養子縁組や生前贈与を上手に活用しよう。

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では、相続税を抑えるためには、どんな対策があるのでしょうか。その一つが、養子縁組をすることです。

例えば、養子縁組をすると、法定相続人が一人増え、前述した基礎控除額が1人分増えることになります。お父さんがお亡くなりになり、相続人がお母さんと子ども2人だった場合、法定相続人は3人ですから、基礎控除額は4,800万円です。しかし、子どもの配偶者とお父さんが養子縁組をしていた場合には、法定相続人は4人となり、基礎控除額は5,400万円となるわけです。
また、生命保険金の非課税枠についても、500万円×3人=1,500万円から500万円×4人=2,000万円になりますので節税になります。
ただし、相続税では、実子がいる場合、養子は1人までしか法定相続人の数に入れられません。また、孫を養子にした場合は、相続税が2割加算になりますのでご注意ください。

このほか、相続税対策の一つとして生前贈与も考えられます。これは、財産を生前に贈与しておくことで、相続財産を減らすことにつながります。もらう側が年間110万円までは、贈与されても贈与税がかかりませんので計画的に財産を贈与しておくといいでしょう。また、
「直系尊属からの住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」を使うのも効果があります。
こうした方法以外にも節税対策は色々とありますので、詳しくは税理士にご相談ください。

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