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誰もが安心・快適に暮らせる空間に。高齢者や障がい者でも住みやすい家づくりのポイントとは?

2018/07/23

高齢者が増え続けている日本では、バリアフリー住宅を手に入れる方が増えています。近い将来、住み慣れた我が家のリフォームやバリアフリー住宅への建て替えを検討されているという方も多いのではないでしょうか。ただ、どうすれば快適に暮らせるのかをきちんと検討せず、安易に家づくりやリフォームを進めてしまうと、高齢者や障がい者にとって使い勝手が悪かったり、意味のない設備になってしまったりすることも少なくありません。そこで今回は、阿部建設株式会社の阿部一雄さんに、高齢者や障がい者でも住みやすい家づくりのポイントについてお話をお聞きしました。

阿部 一雄

車いす建築士によるバリアフリー提案!

阿部 一雄

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住みやすい家づくりのポイントは、動線を確認し、きちんと整理すること

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高齢者や障がい者でも住みやすい家を作るためには、まず部屋の配置に気を配る必要があります。大切なのは「動線を整理すること」。図面を見た時に、行き止まりが多かったり、クランクしていたりと、余分な生活動線が生じる家は、どうしても住みにくくなります。

まずは敷地の中で一番気持ちよく過ごせる場所に、リビングなど最も長くいる部屋を配置するようにしましょう。そして、光や風がどのように入ってくるのか、静かな場所かどうかなどに十分気を配りながら、家全体の部屋の配置を考えていきます。

共働きのご家庭が多い若い世代の方であれば、できる限り家事を時短できる動線を考えるようにします。使いやすい直線的な動線を意識し、駐車場から家に入り、キッチンに至るまでの動線は、特にスムーズに移動できるようにします。

このように動線を整理するのと合わせて、浴室やトイレの敷居などで段差ができないようにしていけば、老後も暮らしやすい家が実現できると思います。

高齢者や障がい者が住みやすい家は、決して高齢者や障がい者だけが快適というわけではありません。バリアフリーを実現できれば、誰もが住みやすい家になるはずです。

2階建ての家を建てる時には、老後に1階で暮らすための部屋を確保しておく。

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戸建て住宅の場合、建築費用や立地の問題から2階建ての家を選ぶ方が多いですが、それでも最近は、徐々に平屋の家が増えてきています。以前は全体の1割程度でしたが、今では3割ほどを占めるようになり、若い世代の方の中にも「小さくてもいいから平屋に住みたい」という方が増えてきていると実感します。

平屋の場合、階段を上る必要がありませんから、高齢者や障がい者にとって住みやすいのは間違いありません。ただ、2階建ての家であっても、あらかじめ老後を意識して間取りを考えておけば、生涯にわたって快適に暮らすことも十分可能です。

2階建ての場合には、1階に寝室として使える部屋を用意しておくのがポイントです。若いうちは客間にしておき、老後は寝室にするという手もあります。また、将来寝室となるスペースを見据えてリビングを広めに確保しておくのもいいと思います。高齢になってから困らないよう、くれぐれも若い世代の感覚だけで家づくりを進めないように気を付けましょう。

スロープは、介助者の手を借りず、一人で移動できるものでなければ意味がない。

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バリアフリーの家でよく失敗するのが「スロープ」です。車いすの方が住んでいるご家庭では、スロープを付けることが多いと思います。ただ、実際に車いすの方が使ってみると、自分一人の力では移動できず、介助者に頼らざるを得ないということが少なくないのです。

一人で降りられないスロープなら意味がありません。介助者がいないと家を出られないようであれば、どうしても心にバリアを作り、活動が消極的になってしまうからです。多少お金をかけてでも、昇降機を付けるといった対応をきちんと行うことが大切です。そうすれば、一人で外出できるようになり、心のバリアをなくすことにもつながります。

ちなみに名古屋市内でバリアフリーの家を建てたり、リフォームをしたりする時には、市から80万円の助成金を得られることがあります。自治体によって助成金の有無は異なりますので、事前に調べてみることをお勧めします。

不自由さは千差万別。その人に合ったリフォームができる実績のある業者を選ぼう。

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一般的な住宅をバリアフリー仕様にリフォームする際の費用は、数万円程度から数千万円までさまざまです。また、バリアフリー住宅を新築・建て替える費用は、その方の能力や障がいによって異なってきます。注意すべきなのは、前述のスロープの話のように、とってつけたようなバリアフリーで、介助者がいないと日常の生活動作ができないような安易な仕様にしないこと。これではせっかく新築やリフォームした意味がありません。お金で解決できることは積極的に解決すべきです。安全に、楽に、毎日をストレスなく暮らせる家にすべきだと思います。

高齢者や障がい者が抱える不自由さは、千差万別です。その人に合わせた家を作らなければいけません。ただ、高齢者や障がい者のニーズをうまくくみ取るためには、ある程度の経験と実績がなければ難しいでしょう。バリアフリーに対する知見が十分にあり、柔軟に対応してくれる会社を選ぶことが大切です。

また、バリアフリーの住宅には、障がい者や高齢者だけでなく、そのご家族も住んでいます。本人だけに視点を置いたバリアフリーだけに注力するのではなく、ご家族全員が住みやすい家を考えてくれる会社を選ぶこともポイントだと思います。

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