特集
2017/09/28
ここ数年、注目を集めているのが中古マンション。若い世代を中心に、交通の便に優れた都心の割安な中古マンションをリノベーションし、自分らしいライフスタイルを謳歌する人たちが増えています。ただ、こうした中古物件には、新築にはない思わぬ落とし穴が潜んでいることも。ただでさえ、「一生に一度の大きな買い物」と言われる住宅購入。それだけに、実際にマンションを選ぶとなると、「どうすればいいのか分からない」と悩んでしまう人は多いに違いありません。そこで今回は、マンション管理士の岡部茂さんに、中古マンション購入で後悔しないためのコツを教えてもらいました。
マンション管理組合運営問題のプロ
岡部 茂
まず中古マンションの購入を検討する際には、「ハード」と「ソフト」の両面から物件を確認することが大切です。
まずハード面で要注意なのが、昭和56年5月31日以前の「ピロティ式」のマンションです。ピロティ式とは、土地を有効活用するために1階部分を柱のみにし、駐車場などとして利用しているマンションのこと。こうした建物は、壁がないために強度が弱く、地震などによって倒壊する危険性が高いです。
マンションの耐震性能を考える上で、基準となるのが「昭和56年5月31日」です。これ以後に建てられたマンションは、「新耐震基準」を満たしているため、震度6~7程度(関東大震災クラス)の地震が発生しても、倒壊する危険性はまずありません。ただ、これ以前の建物であっても、ピロティ式ではない5階建て程度の高さであれば、阪神・淡路大震災や東日本大震災でも比較的倒壊していません。「古い=地震に弱い」ということは必ずしも言えませんので、基準の一つとして考えてもらうのがいいでしょう。
ちなみに、古い耐震基準のマンションでは、耐震診断を実施しているケースもあります。ただ、あくまで耐震診断を行うかどうかは、マンションごとに個々で判断するもの。強制ではなく、マンション住民の多数決などによって決まるのが一般的です。
マンションを購入する際には、「ソフト面」でも注意すべき点がありますが、その中でもまず押さえておきたいのが、「管理費」と「修繕積立金」の違いをきちんと理解しておくことです。同じように毎月支払うという点で、大した違いがないように思われがちですが、この違いをしっかり把握しておかないと、中古マンションを購入後、とんでもない落とし穴にはまってしまうことも考えられます。
【管理費】
毎月消えていくもの。マンションの共用部分の光熱費や管理会社の委託料などに充てられ、建物の維持・管理やエレベーターの保守などに使われるものです。
【修繕積立金】
マンション住民による積立金です。将来、大規模修繕を行う時などに使われます。
中古マンションを購入する場合、毎月支払っているはずの「管理費」「修繕積立金」が滞納されているケースが少なくありません。以前に住んでいた人が滞納していた場合、購入者に支払い義務が生じるため、思わぬ高額請求を強いられることになります。なかには、こうした情報の開示を拒んだり、情報提供のために費用を要求したりする悪質なケースも散見されるようですが、売主は、請求があれば情報を開示することが義務づけられていますので、マンション管理組合の理事長や管理会社に必ず確認しておきましょう。
また、住民同士のトラブルを防ぐためにも、管理規約でペットや民泊の可・否なども確認しておくのがベターです。管理規約に目を通すといっても、素人が読みこなすのはなかなか難しいものです。そこで、自分が確認したいことをあらかじめ決めておき、仲介業者などを通じてチェックしてもらうのが良いでしょう。
マンションを購入する際には、管理費と修繕積立金を合算した全額表示になっていることがあります。修繕積立金は、大規模修繕に備える意味でも非常に大切です。全額表示になっている場合は、それぞれの内訳を確認した方がいいでしょう。たとえば、全額表示が同じように2.5万円の場合でも、【管理費/1.5万円、修繕積立金1万円】、【管理費/1万円、修繕積立金/1.5万円】という2つのケースでは、後者の方が、将来のことを見据えた運営になっていると言えます。
また、中古マンションを購入する際には、これまでの修繕積立金の総額がいくらかを確認しておくことも重要です。大規模修繕が必要になって改めて確認すると、実は積立金が不足していた・・・といったケースも少なくないからです。ただ、こうした情報を自ら開示してくれるケースはまずありません。
管理費や修繕積立金の報告は、マンション管理組合の総会で聞くことができます。法律によって年に1回、総会で報告することが義務づけられていますので、無関心にならず、総会に出席して分からないことは確認するようにしましょう。ただ、なかには総会を行っていないところもあります。こうした管理組合は要注意です。