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リフォームは、家族で「相続・介護」の話をするチャンス! 我が家をリフォームする前にやるべきこと。

2019/09/30

実家のリフォームは、大きな出費がかさむ一大イベントです。ところが、お金の問題ばかりに気を取られていると、その後、思わぬトラブルが発生してしまうかもしれません。リフォームをする際、きちんと整理しておきたいのが「相続」と「介護」の問題です。両親はリフォーム後にどんな暮らしを望んでいるのか、相続はどうしたいかなど、あらかじめ考えておくべき問題はたくさんあるのです。そこで今回は、ホームサポートFP事務所の山北淳一さんに、「リフォームを進める前に気を付けておきたいポイント」についてお聞きしました。

山北 淳一

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山北 淳一

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リフォームは、親子がそれぞれ「自分たちの将来」を真剣に見つめ直すチャンスです。

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実家のリフォームは、今後の生活を見つめ直す大きなチャンスです。例えば、父親の立場であれば、「子どもと同居するのか」「老後の生活はどうするのか」など、自分の将来を考えるきっかけになりますし、一方の子どもたちにとっても、「今後どうやって生計を立てていくのか」「生活の基盤をどこに置くのか」「親の介護はどうするのか」などを真剣に考える良いタイミングになるはずです。

リフォームにあたっては、一緒に住む子ども以外の子どもも含め、家族全員できちんと話をするべきです。相続の際、トラブルが発生しないように「今住んでいる土地や建物はどうするつもりか」「リフォーム費用を誰が負担するのか」について、父・母それぞれの希望を確認し、相続についてどう考えているのかを子ども全員に話すことが大切です。また、リフォームを何度も繰り返すことになれば、その分費用もかさんでしまいます。そこで、介護生活になったことも想定した上でリフォームを考えていくことも大事です。

子どもが実家のリフォーム費用を負担した場合、贈与税の課税対象になることも!

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例えば、父親名義の家を、父親自身がお金を負担してリフォームする場合、この家は父親の財産として相続の対象になります。もし、同居する子どもがそこに住み続けたいと考えているなら、そのことをリフォーム前にきちんと他の兄弟に話しておきましょう。そうしないと、父親が亡くなった後、家が相続財産になるため、家をどうするかで揉めることになるからです。

また、父親名義の家のリフォーム費用を、同居している子どもが負担した場合には、その費用は贈与と見なされます。年間110万円を超える部分は、贈与税の課税対象になるので要注意です。そのため、まずはリフォーム費用がどれくらいになるのかを把握しておくべきです。もし110万円を超えるのであれば、対策を講じる必要があるでしょう。対策として第一に考えたいのが、リフォーム前の建物を同居する子どもの名義に変更するという方法です。

子どもへの名義変更を行えば、税金の負担軽減や、相続時のトラブル防止に。

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建物の贈与に対する課税対象額は、固定資産税評価額によって決まります。築年数がかなり経過している場合、評価額が200~300万円というケースも少なくありません。仮に200万円だった場合、贈与税の対象となるのは110万円を超える90万円。90万円×税率10%=9万円の贈与税のみで名義を変更することが可能です。あらかじめ名義を変更しておけば、相続財産から除かれますので、結果的に相続税が課されることはありません。そのため、リフォーム費用が高額になる場合には、特に注意が必要です。

さらに、同居の子どもに名義を変更しておけば、相続の時にトラブルが発生することも少ないでしょう。同居する子どもがリフォーム費用を負担するのであれば、「リフォームに対していくら費用を負担したのか」「いくら贈与税がかかったのか」などを、他の兄弟にきちんと話しておけば、後々トラブルになることも防ぐことができます。ただ、名義を変更していない土地については、相続財産の対象になるため、リフォーム前に他の兄弟に確認をとっておく必要があります。

遺言書を作成したり、エンディングノートを書いたりして自分の意思を残すことが大事。

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リフォームのタイミングで、相続だけでなく介護についてもきちんと話をしておきましょう。親の介護が必要になった場合、同居する子どもが介護をする可能性が高くなると思われますので、リフォームを機に家族全員で話をしておくことをおすすめします。介護はみんなですることになりますが、誰が主になってやるのかを決めておくのが良いでしょう。

相続については、資産をたくさんお持ちのご家庭よりも、自宅(敷地・建物)と預貯金だけ(約5000万円以下=相続税の非課税世帯)といったケースの方がトラブルに発展しやすいです。残された家族でうまく分配できずに揉めることが多いからです。そのため、生前に遺言書を残したり、名義を変えるといった対応をしておくことが大事です。もし遺言書を残すのは負担が大きいと感じるようなら、例えばエンディングノートなどで自分の意思を残しておくもおすすめです。近年、携帯やパソコン等のパスワードが、残された家族がわからないというトラブルも増えていますので、有効かと思います。

リフォームのタイミングで専門家のアドバイスを求めるのもいいと思います。相続であれば弁護士や司法書士、介護に関しては介護・医療の専門家、そしてリフォーム費用やローンについては専門知識のあるファイナンシャルプランナーにぜひ相談してみて下さい。

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