特集
2019/12/26
家づくりを考える上で、大きなポイントとなるのが建材選びです。例えば、外観にどんな建材を使うのかによって、見た目の印象はガラリと変わりますし、その後のメンテナンスにも大きな影響を及ぼします。ただ、住宅の専門知識がない人が、たくさんの種類の中からベストな建材を選び出すのは至難の業です。そこで今回は、数多くの内装・外装工事を手掛けるプラスストーンの朝倉昌和さんに、家づくりを進める際に押さえたい建材選びのコツを詳しくお聞きしました。
「職人さん」と、お客様をつなぐ
朝倉 昌和
現在の住宅の外壁には、一般的に「サイディング」が使われていることが多いです。サイディングとは、セメント質と繊維質を主とした板材で、壁に貼るものです。サイディングの一番のメリットは、他の建材を使うのに比べて、価格を安く抑えられること。建築費用をお値打ちにしたい場合には有効な選択肢になります。
ただ、価格を優先するのではなく、デザイン性の高い外観にしたいと考えているのであれば、サイディング以外の建材を選ぶのがおすすめです。選択肢として挙がってくるのが、「石材」「タイル」、「左官材料」などになります。
石材を使う場合に注意したいのが「重さ」です。外壁すべてに石材を使うとなると、当然ながらかなりの重量になります。そのため、家の構造自体を、石材の外壁の重さに耐えられる造りにする必要が出てきます。先ほどご紹介したサイディングに比べるとかなりコストもかさむことから、最近では外壁に石材を使う家はかなり少なくなっています。それでも、サイディングには見られないような味わい深い経年変化が魅力です。年数を経ることに醸し出される独特の風合いが好きな方にはぜひおすすめしたいです。
外装だけでなく内装用の建材としても使われることが多いタイルは、なによりデザインの豊富さが一番のポイントです。サイディングや石材などと比べると、住む人の要望に応じて、多彩な外観デザインを作り上げることができます。外観へのこだわりが強い方、デザイン性を重視したい方にはピッタリの建材だと言えます。
また、タイルにはメンテナンス費用が抑えられるという強みもあります。耐久性が高く、施工後の劣化が少ないことから、長い目で考えるとお得だと言えるかもしれません。ただし、タイルの弱点は、割れた場合に張り替えが必要になること。メーカーに在庫がある間は問題ないですが、施工してから年月が経ってしまうと、すでに生産が終了していて、同じタイルを入手することができなくなってしまうケースもあります。
もう一つの選択肢がこてを使って塗る「左官工事」です。最近では、国内だけでなく海外からも新たな建材が入ってくるようになり、以前に比べて種類も豊富になっています。とりわけ自由度が高く、個性的な外観に仕上げたいという方にはうってつけだと思います。ただ、注意すべきなのは、仕上がり具合に職人さんの色が出やすいこと。左官工事を依頼する際は、自分の理想の仕上げを得意としている職人さんを選ぶことが重要です。
家づくりを始める時、どこに頼めばいいのか分からずに悩んでしまう方はきっと多いと思います。ハウスメーカー、地元の工務店など、頼れるところはたくさんあると思いますが、なかでも特に重視してもらいたいのが、「信頼できる人を見つけること」です。「この人なら任せて大丈夫」と思える人に巡り会うことが、家づくりを成功させる何よりの近道です。
そして、人選びの一番のポイントとなるのが、「コミュニケーションをきちんと取ることができる人かどうか」です。まずは、こちら側の意図をきちんとくみ取り、それを形にしていけるコミュニケーション力の持ち主かどうかを見極めることが大切だと思います。
家を建てる時に取り組んでおきたいのが、その家に住む全員が「何を大事したいのか」をあらかじめ整理しておくこと。例えば、「洗濯物が干しやすい家にしたい」「リビングは大空間にしてゆったり寛ぎたい」など、家族のそれぞれが大切にしたいものを洗い出しておくのです。ただ、自分たちだけではポイントを整理するのが難しい場面も出てくるはず。そんな時こそ、コミュニケーションを取りながら自分たちの要望を聞き出してくれる、信頼できる専門家に頼りたいところです。
建材を選ぶ際には、使い勝手の良さにも注目したいところです。家は、毎日暮らす場所ですから「使いやすい」と思えることが一番です。そこで工夫したいのが、家族が毎日行き来する玄関です。玄関は、雨に濡れて帰ってきたり、外で遊んできた泥だらけのお子さんが汚してしまったりすることもあることから、メンテナンスの手間が掛からないタイルを選ぶのが適しているといえます。
また、キッチンの天板は、普段から調理で使う場所だけに、どうしても表面が傷つきやすくなります。そこで、経年劣化してもそれが味になる石材を選ぶのがおすすめ。また、最近では、キッチンの天板用として使うことができる左官材料も増えてきています。逆にあまりおすすめできないのが、レンジ周りにタイルを使うことです。タイルを使うと、どうしても油などで目地が汚れてしまうため、全体が汚く見えてしまうからです。
このように、建材を考える際には、デザイン性だけでなく使い勝手も意識しながら、場所ごとに最適なものを選ぶようにしましょう。