特集
2020/12/25
妊婦さんには、出産に関して公的機関や民間の医療保険から支払われる給付金があることを知っていますか? 一般的な給付金は「出産育児一時金」ですが、他にも出産手当金や育児休業給付金などの給付金が存在します。さらに、加入している医療保険の種類や特約によっては、民間の医療保険からさまざまな給付金を受け取れるのです。今回は、出産に際して損をしないように、出産にまつわる給付金について、ファイナンシャルプランナーがわかりやすく解説していきます。
家計のホームドクター
服部 清和
妊娠から出産までに発生する費用は、費用も高額です。しかし出産は、病気やけがではないため、健康保険の給付対象となりません。つまり、出産に要した費用は10割負担、全額自己負担となります。
一般的に、自然分娩にかかる出産費用は、40万円から50万円程度。これらの費用がすべて実費と考えたら大変です。そこで健康保険に加入している人に「出産費用として一時金を支払いましょう」という制度が、「出産育児一時金」です。
出産育児一時金は、健康保険に加入している人、もしくは、配偶者の健康保険の被扶養者が対象です。仕事をしている、していない、関係なしに受け取れる唯一の給付金です。余程の理由がない限り、すべての人が対象になると考えて良いでしょう。
出産育児一時金を受け取るためには、妊娠4ヶ月以上(85日以上)で出産したことが条件となります。また、出産育児一時金で受け取れる金額は、1児に対して42万円(産科医療補償制度の対象外であれば40.4万円)。つまり、双子の出産であれば84万円(80.8万円)が支払われます。
なお、双子などの多胎児を妊娠している場合、健診の回数が増え、分娩費用が高くなり、健診費用、分娩費用を合わせれば、概算で35万円ほど上乗せされます。胎児が1人であれば、40~50万円の費用が発生しますから、双子であれば75万円~85万円程度と考えておきましょう。
健康保険の被保険者で、雇用保険へ加入している妊婦さんは、出産手当金や育児休業給付金が受け取れます。出産手当金と育児休業給付金は、どちらも出産によって収入が得られなくなる人のための制度です。
出産手当金は、自分で働いて健康保険に加入していた妊婦さんが対象。健康保険の被保険者である妊婦さんが、出産のために仕事を休み、給与の支払いを受けていない場合に支払われます。出産の日以前42日前から始まり、出産翌日~56日目までが対象。この3ヶ月ちょっとの間で、実際に仕事を休んだ期間が対象になり、出産手当金が支給されます。
一方で育児休業給付金は、働いて雇用保険に加入している妊婦さんが対象です。育児休業給付金は、産後休業期間(出産の翌日から8週間)が終了した次の日から、子どもが1歳に達する前日までが対象です。ちなみに、パパママ2人とも育休制度を利用する場合には、パパママ育休プラス制度が利用でき、2ヶ月間延長できます。
出産手当金は、健康保険協会から支払われ、育児休業給付金は雇用保険(国)から支給されるため、要件さえ満たせば、両方の給付金が受け取れます。なお、出産手当金については自営業者やフリーランスの人でも対象となりますので、給付対象者かチェックしてみましょう。
帝王切開となってしまった場合には、自然分娩に比べて入院期間が延びます。また、別途手術費用も発生してくるため、自然分娩と比較して20万円ほど高額になると思っておきましょう。
ただし、帝王切開の場合は健康保険の対象となるため、手術費用が3割負担で済みます。さらに、高額療養費制度も活用でき、妊婦さん自身もしくは配偶者等の収入によって負担額が軽減されます。
また、民間の医療保険でも、帝王切開で出産をした際には、入院給付金や手術給付金が支払われます。帝王切開で出産する人の割合は、約5人に1人であるため、前もって医療保険へ加入しておくことをおすすめします。ちなみに、妊娠前までに医療保険へ加入しておかなければ、給付の対象にはなりません。
医療保険に加入する際に注意するのは、加入時期です。一般的な病院では、帝王切開で出産した経験のある妊婦さんに対しては、以後も帝王切開での出産をすすめたり、帝王切開に限定したりします。
1人目の帝王切開後に加入した保険は、年齢や経過年数によっては数年~5年程度の不担保期間が設定され、入院や手術の給付対象にならない可能性が高いです。ただし1人目を出産する前に加入していた医療保険であって、2人目も帝王切開で出産した場合には、給付金が支払われます。契約条件は保険会社や加入時期によって変わりますので、複数の会社で比較してみることをおすすめします。
吸引分娩は、異常分娩に該当するため、医療保険の対象になります。知らずに損をしてしまわないように、医療保険の給付対象を覚えておきましょう。
異常分娩であれば、基本的に医療保険の給付金があります。吸引分娩であっても、入院給付金含む手術給付金が状況に応じて支払われます。ただし、保険加入時期や保険内容によっては支払われない可能性もありますので、加入時には保険会社と相談をしましょう。
出産に関わる費用として、基本的には異常分娩であればすべて給付されます。帝王切開や吸引分娩のほか、鉗子分娩、骨盤位分娩、切迫早産、会陰切開などが挙げられます。ただし、保険会社によっては補償内容が異なりますから、自分の加入している保険を確認してみましょう。なお、自然分娩であっても、入院給付金が支払われる特約や医療保険があるので、状況に合わせて加入しておきましょう。
出産育児一時金以外の給付金については、知らなかった人も多いのではないでしょうか?自分が加入している医療保険を今一度見直して、出産までにどのような給付金がもらえるのか確認しておきましょう。
※本情報は2020年12月現在の情報です。