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子どもを産む時に損しない方法とは? 出産でもらえるお金と保険についてFPが詳しく解説!

2022/03/31

出産時には、公的機関や民間の医療保険から支払われる「給付金」があります。一般的な給付金は「出産育児一時金」ですが、そのほかにも「出産手当金」や「育児休業給付金」などの給付金が存在します。さらに、加入している医療保険の種類や特約によっては、民間の医療保険からさまざまな給付金を受け取ることも可能です。そこで今回は、出産時に受け取れるお金について、ファイナンシャルプランナーの服部清和さんに詳しくお聞きしました。

服部 清和

家計のホームドクター

服部 清和

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出産時にもらえる「出産育児一時金」ってどんなもの?

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出産を控えている人であれば、「出産育児一時金」という言葉を聞いたことがあると思います。ただ、もらえるお金や対象者についてまで詳しく把握できている人は意外に少ないかもしれません。

妊娠から出産までに発生する支払いは、健診費用や出産費用、入院費などさまざまで、高額になります。しかし、病気やけがではないため、健康保険の給付対象とはならず、出産に要した費用は全額自己負担となります。一般的に、自然分娩にかかる出産費用は、40万円から50万円程度と言われています。これらの費用がすべて実費負担となれば大変です。そこで、健康保険に加入している人に、出産費用として一時金を支払おうという制度が「出産育児一時金」です。

出産育児一時金は、健康保険に加入している人、もしくは配偶者の健康保険の被扶養者が対象です。ただし、妊娠4ヶ月以上(85日以上)で出産したことが条件となりますので注意してください。また、出産育児一時金で受け取れる金額は、1児に対して42万円(産科医療補償制度の対象外であれば40.4万円)です。つまり、双子の出産であれば84万円(80.8万円)が支払われます。

なお、双子などの多胎児を妊娠している場合は、健診の回数が増え、分娩費用が高くなります。健診費用、分娩費用などを合わせると、おおむね35万円ほどが上乗せされますので、双子であれば75万円~85万円程度となります。

働く母親がもらえる「出産手当金」と「育児休業給付金」とは?

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出産手当金と育児休業給付金は、健康保険の被保険者で、雇用保険に加入している妊婦さんが使える制度です。妊娠や出産をし、働けなくなれば、給与などがもらえなくなってしまいます。そこで、働く母親の給与をある程度補償してあげましょうというのが、出産手当金・育児休業給付金です。

出産手当金は、自分で働いて健康保険に加入していた妊婦さんが対象です。健康保険の被保険者である妊婦さんが、出産のために仕事を休み、給与の支払いを受けていない場合に支払われます。対象となる期間は、出産の日以前42日前から、出産翌日~56日目まで。この3ヶ月ちょっとの間で実際に仕事を休んだ期間が対象となり、出産手当金が支給されます。

一方、育児休業給付金は、雇用保険に加入している妊婦さんが対象となります。

育児休業給付金は、産後休業期間(出産の翌日から8週間)が終了した次の日から、子どもが1歳に達する前日までが対象です。ちなみに、パパママ2人とも育休制度を利用する場合には、パパママ育休プラス制度が利用でき、2ヶ月間延長できます。

出産手当金は、健康保険協会から支払われ、育児休業給付金は雇用保険(国)から支給されるため、要件さえ満たせば、両方の給付金が受け取れます。なお、出産手当金については自営業者やフリーランスの人でも対象となりますので、給付対象者かどうかをチェックしてみましょう。

帝王切開の出産でもらえるお金は? 医療保険は活用できる?

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胎児の状況や出産時の状況によっては、帝王切開での出産を余儀なくされる場合があります。帝王切開となってしまった時には、自然分娩に比べて入院期間が延びます。また、別途手術費用も発生してくるため、自然分娩と比較しておおよそ20万円ほど高くなることが多いようです。

帝王切開での出産は、自然分娩の出産とは異なり、健康保険の対象となります。そのため、手術費用は3割負担で済みます。さらに、高額療養費制度を活用すれば、妊婦さん自身もしくは配偶者等の収入によって負担額が大幅に軽減されます。

また、帝王切開で出産する際は、民間の医療保険を活用することも可能で、入院給付金や手術給付金が支払われます。帝王切開で出産する人の割合は、約5人に1人だと言われています。そのため、妊娠・出産を考えている人は、前もって医療保険に加入しておくことをおすすめします。

ちなみに、これまでは妊娠前までに医療保険へ加入しておかなければ、給付の対象にはなりませんでしたが、最近では妊娠後の加入でも入院給付金や手術給付金が支払われる商品が販売されるようになりました。契約条件は保険会社や加入時期によって変わりますので、複数の会社で比較してみるのがよいでしょう。

吸引分娩で出産した時には、医療保険はもらえるの?

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吸引分娩は、異常分娩に該当するため、医療保険の対象になります。知らずに損をしてしまわないように、医療保険の給付対象を覚えておきましょう。吸引分娩の場合には、入院給付金を含めた手術給付金が状況に応じて支払われます。ただし、保険加入時期や保険内容によっては支払われない可能性もありますので、加入のタイミングで保険会社にきちんと確認しておいてください。

そのほかにも、基本的には異常分娩であれば、すべてが給付対象になります。帝王切開や吸引分娩のほか、鉗子分娩、骨盤位分娩、切迫早産、会陰切開などが挙げられます。ただし、保険会社によっては補償内容が異なりますので、自分が加入している保険を確認してみましょう。なお、自然分娩であっても、入院給付金が支払われる特約や医療保険があるので、状況に合わせて加入しておくのもいいと思います。

出産育児一時金については知っていても、それ以外の給付金や民間の医療保険の活用法については、知らなかった人も少なくないと思います。自分が加入している医療保険を今一度見直して、出産までにどのような給付金がもらえるのか確認しておくようにしてください。

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