特集
2022/02/17
妊娠すると考え始めることのひとつが「子供の教育費」です。「子供が生まれたら学資保険」とよく言われるように、学資保険は教育費のポピュラーな貯め方のひとつ。そこで今回は、保険の専門家であるファイナンシャルプランナーの服部清和先生に、学資保険のメリットやその加入タイミング、得する入り方について詳しくお聞きしました。
家計のホームドクター
服部 清和
これから生まれてくる子供の教育費に、漠然とした不安を抱いている方も多いと思います。そんな方の大きな安心につながるのが「学資保険」です。まずはその内容をきちんと理解し、メリット・デメリットを把握しておくことが大事です。
学資保険とは、子供の教育費にそなえるための貯蓄型の保険のことです。毎月の保険料を支払うことにより、必要なタイミングで「満期学資金」としてお金を受けとれます。なかなか自分で貯金ができないという人も強制的に貯金できるのが魅力です。また、契約形態により、契約者である両親にもしもの事があれば、それ以降の保険料の支払いが免除となり、学資金はそのまま受けとれるのも大きな特長です。子供の医療保障がつくタイプもあり、病気やケガへの備えにもなります。
学資保険の一番のメリットは、商品の選び方次第で、預金するよりもお金を増やせることです。定期預金の場合、金利相場が0.1%を大きく下回る現在は、ほとんどお金は増えていきません。一方で、学資保険の場合、保険料の支払い合計額190万円にたいして、大学進学時に200万円を受けとれるという事例もあります。ただ、学資保険は途中で解約すると、支払った保険料よりも戻ってくるお金のほうが少なくなる(元本割れする)可能性があります。緊急でお金が必要な場合も、元本割れのリスクを考えると簡単に解約できないのがデメリットといえるでしょう。
出産を控えるお母さんの中には「いつ入ればいいの?」「生まれてから考えればいい?」などと悩んでいる方も多いと思いますが、学資保険には入れる期限が決まっています。
学資保険は、出産予定日の140日前から加入できる商品もあります。入るタイミングは早ければ早いほどお得です。なぜなら、契約者である両親の年齢が1歳でも若いほうが、月々の保険料が安くなるから。さらに、満期(受け取り)時までの期間が長いほうが、返戻率(利回り)も上がる傾向にあるためです。
学資保険に入る時には、どんな保険商品を選ぶか、月々の保険料はいくら支払えるか、いつまで支払うか、子供が何歳で学資金を受けとるかなど、決めておかなければならない事がたくさんあります。保険選びで失敗しないためには、目的やライフスタイルに合わせてさまざまな商品をじっくり比較・検討することが大切。子供が生まれる前の落ち着いた時期にしっかり考えておくのがベストです。いざ出産後に入ろうと考えていても、なかなか手続きに時間が取れずに遅れてしまうこともあるため、妊娠中が最も賢い加入タイミングだと言えます。
契約者である両親に万が一の事態があっても、そのままの保障がつづくのが学資保険の特長。これはもしも子供が生まれる前に起こった場合でも、しっかりと保障をうけられるケースがほとんどです。
学資保険に加入するときは、「保険料の支払い期間」と「学資金の受け取り時期」について決めます。最大のメリットを受けるためにも、ぜひお得な加入方法を選ぶようにしましょう。
少しでも高い返戻金を期待するなら、保険料は一括で支払うのが最も有利です。ただ、数百万円もの大金を一度に払うのは簡単ではありません。そこでおすすめしたいのが「短期型」の積立てです。一般的には子供が18歳になるまで保険料を支払う場合が多いところ、15歳まで、10歳までのように短縮するのです。短期にすることで月々の保険料の負担は大きくなりますが、そのぶん返戻金も高くなります。
「一括」や「短期型」とくらべれば返戻金の期待は小さいものの、コツコツと積立てたいという人には「全期間型」が安心です。全期間型にすれば月々の支払いは安くなり、負担を軽くすることができます。
満期学資金を受けとりたいタイミングは、家庭や子供によってさまざまです。高校入学にそなえるには15歳を給付時期(満期)にし、大学入学にあてたい場合は18歳に設定します。大学入学に設定した場合も、入学時に一度に受け取る方法と、学年ごとに分割で受け取る方法があります。保険の種類によっては、中学入学や高校入学時に「祝い金」がもらえるものもあります。必要がなければ「祝い金」を受けとらずにそのまま預けておくことも可能です。
学資保険で失敗しないために、最も重要視したいのは「返戻率(へんれいりつ)」です。返戻率とは支払う保険料にたいして、戻ってくる学資金の割合のこと。通常%で表示し、返戻率は105%や110%のように設定されています。ただし、返戻率のより高い保険を選ぶというのを基本にしつつも、保険商品によってはそれなりの契約条件が課せられる場合が多いので、よく調べるようにしましょう。
学資保険には、「保障型」と「貯蓄型」の2種類があり、多くの人に選ばれているのは「貯蓄型」です。「保障型」は、両親のもしもの事態や子供の病気などがあった際、手厚いサポートが受けられるのが特徴です。ただ、その分、「貯蓄型」に比べると返戻金が少なくなってしまうのがデメリットです。「貯蓄型」であれば、「保障型」よりも万が一の時の保障が薄い分、将来に向けて効率よく教育資金を貯めることができます。
学資保険の契約者は、両親のどちらか一方、より年収の高い人が加入するのが一般的です。その方が、生命保険料控除による恩恵が大きくなり、税金を抑えることができます。また、万が一の時の遺族年金の支給が少ない主婦(夫)を契約者にするというのも選択肢の一つでしょう。
学資保険は、教育資金を蓄えるためにとても大切なものです。きちんとポイントを押さえたうえで、くれぐれも間違った選択をすることがないように十分注意しましょう。