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40年ぶりの民法大改正で新制度もスタート!「相続の正しい進め方・対処法」を弁護士さんに聞きました。

2019/05/27

最近ではメディアなどで取り上げられる機会も多くなった「遺産相続」。ただ、実際には、自分の身に降りかかってみないと実感が湧かないという方も多いはずです。しかし、事前の準備を全くしていないと、いざ相続が始まってからではうまく対処できず、思わぬ落とし穴にはまってしまう危険性も。また、昨年には40年ぶりに民法が大改正され、相続に関する新たな制度も始まっています。そこで今回は、照国法律事務所の樋田嘉人弁護士に「相続の手続き方法や正しい対処法」について詳しくお聞きしました。

樋田 嘉人

裁判所から歩いて直ぐの法律事務所

樋田 嘉人

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相続が始まったら、まずは「遺言書の有無」を確認するところからスタート。

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相続が始まったら、まず初めに遺言書があるかないかを確認しましょう。遺言書がある場合、原則として遺言の内容に従って相続すればいいからです。
ただし、遺言書が見つかっても、慌てて開封してはいけません。遺言の方式には大きく分けて公証役場で作る「公正証書遺言」と、自分で書いて残す「自筆証書遺言」の2つがあります。公正証書遺言以外の遺言書については、家庭裁判所で検認という手続きをとる必要があり、封印のある遺言書の開封も検認手続の中で行うことになっているからです。

「公正証書遺言」か「自筆証書遺言」かを見分けるポイントですが、封印がしていない遺言書の場合は、検認手続外でも開封することができますので、開封して中を見てみましょう。封印がしてある遺言書の場合は、公証役場の封筒に入っていれば「公正証書遺言」だろうと推測できます。逆に、公証役場以外の封筒に入っていれば「自筆証書遺言」の可能性が高いといえます。

遺言書がない場合には、「相続人は誰か」「遺産は何か」の2つを確定し、具体的にどう分けるかについて話し合いをすることになります。「相続人は誰か」は、戸籍を追いさえすれば確定することが可能です。「遺産は何か」については、手広く調査をする必要があります。なお、生命保険の死亡保険金は、ほとんどのケースで、受取人固有の財産となり遺産には含まれません。

預貯金は勝手に引き出せなくなるので要注意。遺産の調査には地道な作業が必要です。

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預貯金は、遺産分割の対象になるため、勝手に引き出すことはできないので注意が必要です。とはいえ、葬儀費用など緊急の支出が必要な場合がありますよね。相続人全員の合意の下で引き出せればいいですが、それができない場合でも、今年の7月から、預貯金額の1/3に各共同相続人の法定相続分を乗じた額については引き出せることになりました。例えば、子のある配偶者であれば、相続分は1/2になりますから、1/3×1/2=1/6は払い戻しができます。ただし、金融機関毎に150万円が上限となります。これを超える払い戻しが必要な場合は、家庭裁判所で仮処分手続きをとる必要があります。

被相続人の遺産を簡単に確認する方法はありません。預貯金口座の有無については、それぞれの金融機関に戸籍などを持参して問い合わせをすれば対応してくれますが、地道に調べていく方法しかないでしょう。

一番の手がかりは、「家に届く郵便物」と「残された通帳」です。例えば、固定資産税の納付通知書があれば不動産があることが分かります。また、証券会社からの郵便物があれば、株や債権などを持っているはずです。逆に、金融機関等から返済の通知があれば、債務があることが確認できますし、通帳を調べて保険会社の引き落としがあれば、生命保険に加入していることが推察できます。

借金などの負債も相続対象になるが、相続放棄を選べば、負債を引き継がなくて済みます。

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相続は、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も引き継ぐことを意識しておましょう。原則的に、債務、借金などの負債についても法定相続分を引き継ぐことになります。

プラス、マイナス両方の財産があった場合、プラスの財産だけを引き継ぐことはできません。もし、マイナスの財産の方が大きかった時には「相続放棄」をし、プラスの財産もマイナスの財産も何も引き継がないという選択をすることができます。

相続放棄ができる期間は、相続が開始して自分が相続人になったことを知ったときから3ヶ月間しかなく、その間に遺産を調べる必要があります。ただし、裁判所に期間の延長を求めれば、数ヶ月伸ばすことも可能です。債務の方が多いかもしれないとお感じになる場合には、早めに弁護士に相談することをおすすめします。債務については、日本には信用情報機関(JICC,CIC,全国銀行個人信用情報センター)があり、そちらに問い合わせれば、それぞれに加盟している金融機関などの債務を確認することができます。

ちなみに消費者金融で借りていた場合には、調査してみると過払い金があり、マイナスだと思っていたものが逆にプラスだったということもあります。そういう意味でも早めに弁護士に相談するのが良いでしょう。

40年ぶりに相続に関する法律が改正。新たな制度が始まっています。

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昨年、相続法(民法及び家事事件手続法の一部)の改正が成立し、今年から順次新たな制度が始まっています。改正のポイントをぜひ押さえておきましょう。

まず「特別寄与料請求権」が設けられました。これまでは、親と同居している男性の妻が介護で苦労したとしても、相続人に当たらず、彼女自身が金銭的に報いられることはありませんでした。こうした状況を考慮し、相続人以外の親族が、無償で被相続人の療養看護等の特別の寄与を行った場合、一定の要件のもとで、相続人に金銭の支払いを請求できようになりました(令和元年7月1日施行)。
また、新たに「配偶者居住権」も創設されました。これは、相続開始時に被相続人所有の建物に居住する配偶者が、相続開始後終身その建物を無償で使用することができるようにする権利です。建物の所有権を相続してしまうと、その分預貯金等から相続できる金額が大きく減りますが、「配偶者居住権」は所有権よりも低い価値に評価されますので、その分建物の所有権を相続するよりも預貯金等から多く相続できるようになります(令和2年4月1日施行予定)。
さらに遺言作成を簡便化するため、すべて自筆が原則だった自筆証書遺言において、財産目録に限ってパソコンなどからの印刷物で済むようになりました(平成31年1月13日施行)。また、自筆遺言証書を法務局で保管できる制度も新設されています(令和2年7月10日施行予定)。

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