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阿部 一雄

車いす建築士によるバリアフリー提案!

阿部 一雄 あべ かずお

阿部建設株式会社

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事例・コラム

2021/12/22 00:00

実例(2)「障がい者とその家族、ALS患者N様邸」

障がい者の使いやすさ、それを介助する家族の暮らしやすさを両立できなければ本当のバリアフリー住宅とは言えません。障がい者とその家族、双方にとっての快適性を考える実例として、ALS患者のN様邸と脊椎損傷を負い車いす生活になったN様邸をご紹介します。

Y様の奥様は数か月前まで教員として働き、夫婦と二人の子供、そして母親との5人家族で、ご両親が建てた2世帯住宅(築40年木造住宅)に住んでいました。数か月前までは車の運転もできましたがALSは進行性の病気です。近い将来車いす生活を余儀なくされることは容易に想像ができました。当初は奥様の症状が重くなっても不便なく暮らせるよう改修工事の方向で考えていましたがY様の家が段差や耐震性、断熱性機能などが低い昔ながらの家であり改修工事とはいえ大きな費用がかかることが見込まれました。また、双方が快適に暮らす間取りや距離感の確保を実現するには総合的に制約の多い改修では難しいと判断し建て替えを決断、車いすでも快適に生活できる設計を求められました。


主なバリアフリー箇所

スロープ専用の玄関を設け車いすを外と内用に乗り換えられるよう十分なスペースを確保しました。家族が集まるリビングは夫婦世帯用とお母様用の2つに分けプライベート空間を保持しつつも程よい距離感を確保した間取りとしました。今後車いすを使うようになった場合使い勝手の良いように廊下、LDK、WIC、寝室を行き止まりができないよう回遊性のある間取りにすることにより散歩感覚で家の中を行き来できるように設計しました。将来的にベッドで過ごすことが多くなることも想定し寝室と水回りの導線を短くし、トイレと寝室の壁を取り払うことにより介助・介護する家族の負担を減らすことができました。サンデッキも設け外出をする機会が少なくなるであろう奥様が家庭菜園を楽しめれるよう、暖かい日は草花に触れたり日光浴を楽しんでもらえるようにしました。


奥様はこの家で4年間暮らしお亡くなりになりました。Y様からは介助・介護の負担も少なく快適に奥様と過ごすことができたと仰っています。奥様とその家族どちらか一方に偏ることなく双方が快適に過ごすことができるバリアフリー住宅に繋がったと実感しています。