阿部　一雄 あべ　かずお

機能性とデザインが共存するバリアフリー施設の実例

3つの施設からなる医療タウン
1軒目は皮ふ科、腎・泌尿器科、調剤薬局からなる医療タウンです。地主の方から土地活用の要望を受け、独自に専門家のチームをつくり、土地の貸借に関わる交渉から建設までをトータルでコーディネートしました。各分野のプロの知識や経験を活かし、地主と医師それぞれにメリットが得られるよう配慮しながら進めました。プロジェクトの統括を当社が担い、全体のデザイン性に統一感が生まれ、工期やコストを抑えられたことも特徴です。建物には、構造計算によって十分な耐震性能を確保し、天井が高い開放感のある待合室をつくりました。木造だからこそ叶う温かみのある空間です。また、受付から診察、処置や検査といった患者さんの動線に呼応して、職員がスムーズに対応する裏動線も機能します。移動距離はできる限り短くし、収納を使いやすい位置に設計することで無駄を無くし、効率性を高めています。

地域に開き、街に解け込む福祉施設
2軒目は、障がい者の生活介護と就労の機会を提供する多機能型事業所です。この事業所では、障がい児とそのご家族を対象に地域ぐるみで子育てや療育、文化活動などを支援し、幅広い年代の障がい者に農業を通じて働く場を提供しています。「地域の人々との交流が広がるような場にしたい」というご要望を受け、建物の間口は広く、奥行きを浅くすることで、気軽に入れる雰囲気づくりを目指しました。畑の一部には売買コーナーや、ピザ窯も設置しています。柔らかな日差しがたっぷり入る南側には活動室を設け、大型の引き戸を開ければ、食堂まで行き止まりのない回遊動線で繋がります。相談室・多目的室に設えた畳スペースは「心が休まる」と皆さんから好評です。空気式床暖房を採用し温熱環境にも配慮。木の温もりが包み込むこの施設に利用者の夢や希望、そして無限の可能性が広がっています。

利用者もスタッフも、誰もが過ごしやすい施設
バリアフリー施設は、利用者もそこで働く方も、誰もが快適に過ごせる空間でなければいけません。クリニックでは患者さんとスタッフの両方が円滑に動くことが出来る動線を意識し、福祉施設では地域の方々との交流を大切にできるつくりに。いずれの施設も木の温かみを感じられる工夫がなされており、心地良く快適に過ごせる空間となっています。